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涼風の残響【鬼滅の刃】

第26章 宵闇と朝焼け


風音が技で庇ってくれたお陰で、実弥も義勇も炭治郎も、四肢の欠損は見当たらない。だが全ての衝撃を回避することは、もちろん叶わなかったため、体への損傷は小さなものでは済まなかった。

だが動くことは出来るし、これから悪足掻きを始める鬼舞辻の動きを阻止することも可能な状態だ。

陽光が差すにつれて膨張を始めた鬼舞辻は、諦め悪く炭治郎を取り込もうとしたので、実弥は力ずくで引っ張り出し、後方へ投げ捨てる。

「ボサっとしてんじゃねェ!ぶっ殺すぞォ!足止めだ!絶対逃がすんじゃねェぞォ!」

「おい、不死川!風音のところに行ってやれ!」

と返ってきたのは炭治郎の返事ではなく、珍しくも義勇の叫びだった。

「不死川さん!こっちは任せてよ!柱全員無事なんだから、どうにか出来るよ!だから早く風音ちゃんのところに行ってあげて!」

そして続いて無一郎からも声が掛かり、実弥は鬼舞辻に技を出し終えた後、風音がいる場所へ目を向ける。
するとそこにあったのは、風音から出たであろう大量の血と、そのような大きな負担を強いられた体を治療する、青年の姿だった。

「クソ……まだ終わってねェだろ!風音が望んでんのは?!」

鬼舞辻を倒さなくてはならない。
風音の側に駆け寄ってやりたい。

そんな二つの感情に揺れていた実弥の手首が、ヌルりとした生暖かい何かに力強く握られた。

「柊木さん、待ってますよ。さっき落ちてた紙切れ見たんですけど……実弥くんの側へって書かれてました」

声を聞いただけで誰か分かった。だが、ヌルりとした感覚の正体が分からず、そちらへ目をやり、息を呑んだ。

「牧野……テメェ、その指」

「指なんて今はどうでもいいでしょう?!早く行かないと、柊木さん危険な状況なんですよ!」

決戦終結後、風音と実弥の横っ面を殴りに行くと豪語していた、牧野の右手の二本の指が欠損していた。
だが牧野にとって今はそれは重要なことではないと、実弥を風音の元へ誘うように手を振り払った。

「クソっ!テメェは死なねぇようにしてろ!」

荒々しくも優しい実弥の言葉に頷き返し、牧野は力なく地面へと倒れ込んだ。
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