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涼風の残響【鬼滅の刃】

第26章 宵闇と朝焼け


時は少し遡り。
天元と愼寿郎が月を見上げてしばらく。

木製の何かが壊される音が二人の耳に響き渡った。

「天元様!禰豆子さんが飛び出して行ってしまいました!今、鱗滝さんが追い掛けて……」

「あぁ、構わねぇよ。竈門の妹は、今からしなくちゃならねぇことがある。鱗滝の旦那に任せとけ」

雛鶴を筆頭に、天元の嫁である、まきをと須磨が屋内から飛び出してきた。その3人の表情は同じ動きを見せる。
焦燥から驚きへ。

天元は嫁たちに、この最終決戦の先のことを詳しく話していなかった。例え風音が予知していたと言えど、確定された未来ではなかったからだ。
禰豆子に関しては予知通りであったものの、現に決戦での状況は目まぐるしく変化している。

嫁たちに限らず、鬼殺隊内で全ての情報を共有したとして、現状のように違うことが起こった時、戸惑い命を落とす結果に繋がる事態を防ぐための処置である。
全ての情報を共有しているのは、産屋敷一族と柱はもちろん、天元に槇寿郎だけだ。

「ここには戻らねぇ。だから、この戦が終わった時に、隊士共の傷の処置の手伝いが出来るよう、準備しててくれねぇか?」

やけに静かな声音の天元を不思議に思いながらも、嫁たちは頷き返し、禰豆子と鱗滝の後ろ姿が見えなくなるまで見送って、決戦後に迅速に動けるように準備を進めるため部屋へと戻って行った。

それを確認した二人は険しい表情で立ち上がる。

「煉獄の旦那……いくぞ。俺たちは俺たちで、出来ることしなきゃなんねぇ」

「あぁ。支えることくらいは、全うしなくてはな」

槇寿郎の言葉に頷き、同時に踵を返して、お館様と妹たちがいる部屋に繋がる引き戸に天元が手を掛けたと同時。
人の肌が切れる音ともに、部屋中の物が壊れる音が響き渡った。

「「お館様!」」

二人が足を踏み入れた部屋は、事前に知っていたとしても表情が歪むくらいの惨状だった。

「私のことはいい!それより子供たちの状況を!」

幼いながらも立派に責務を全うするお館様、それを支える妹たちに駆け寄り、鎹鴉からすぐに寄せられるであろう情報に耳を傾けた。
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