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涼風の残響【鬼滅の刃】

第26章 宵闇と朝焼け


「兄ちゃん!風音のところに行ってあげてよ!痛いって……怖いって泣いてる!」

「目の前の状況見やがれ!あいつが構って欲しいからって叫ぶと思うか?!駄々コネねぇ限り俺は側に行けねぇんだよ!」

兄弟の遣り取りに、他のものたちは口を出せなくなった。

そもそも再生を永遠と続ける鬼舞辻の猛攻に、誰一人この場を離れることが叶わぬ状況だ。
誰か一人でも抜けてしまえば、抜けた者の分を誰かが負担することになる。
そうなれば、先を送り続けてもらっている状況であるとは言え、鬼舞辻を足止めする難易度が格段に上がってしまう。

それは誰しもが望んでいることではないし、風音も然りだ。

「あいつは戦いの場で助けてくれって絶対言わねぇ女なんだよ!」

普段から助けを求めぬ風音と、今の状況でさえ助けを求めぬ風音に苛立つ気持ちを発散するかのように、実弥は舌打ちしながら鬼舞辻へと完全に意識を戻した。





眩いばかりの者たちの姿を目に焼き付けた風音は立ち上がり、ふと手首に目をやる。
するとそこには不自然に巻き付けられた紙。

「なんだろう、この紙。……次に……実弥君のことすら忘れた時でいいや。今は少しでも早く……夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風」

自分の名前も今の状況も分からないが、実弥という大切な人の存在や、多くの命の仇である鬼舞辻を思い出した。
それにまだ技を覚えているし、足手まといにはならない。

まだ自分は戦えると誇示するように言葉を発し、地面を強く蹴って戦いの渦中へと飛び込んで行った。

そう簡単に鬼舞辻に届くことはなかったが、確実に触手を斬り落とすことには成功した。

「風音!まだ戦えんのかよ?らしくねぇなァ、痛ぇって泣き叫ぶなんてよォ!」

「ごめんね、びっくりさせて。実弥君と戦い方と塵屑のことしか思い出せなくて、らしくないって分かんないけど……まだ戦える!」

無意識に鬼舞辻と距離を取り着地したところに、実弥が地を滑りながら合流した。

記憶が多く欠如したはずだと理解していた実弥であったが、予想以上の風音の現状に顔を顰める。
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