第4章 お稽古と呼吸の技
解毒剤を作るために服毒したことは幾度となくあるとは聞いていたが、鬼に対して有効だと判明している藤の花の毒を日常的に服毒していたなど言っていなかったし、自身の屋敷で保護してからは服毒などしていないはずだ。
となると、やはり先天的な体質ということになるのだろう。
「また言い聞かせなきゃなんねェこと増えたじゃねェか……十二鬼月はともかく、血鬼術覚えたての雑魚くらいなら血で殺せちまうのかよ……で、それは人に害あんのかァ?」
服毒するな、能力を無闇矢鱈と使用するな……に加え、血に頼るなまで増えてしまった。
基本的に約束事は守ってはいるが、今日みたいに追い詰められたり感情が昂った時は勢い余って何をしでかすか分からないので、実弥がしっかり言い聞かせなければならない。
特殊な少女を保護して弟子にしたことにより、1人で過ごしていた頃と比べ物にならないほど気苦労が増えた実弥にしのぶは笑みを浮かべ、励ますように肩をポンと叩いた。
「剣士になったとして、不死川さんみたいに血を活用して鬼を倒さないよう、しっかり言い聞かせてくださいね?師弟揃って頻繁に怪我をされては大変ですし、何より女の子なんですから……鬼に対して毒だとしても人に害はありませんので、それもしっかり伝えてあげてください」
気苦労が増えた代わりに風音にとって喜ばしい情報を手に入れられた。
起きてから謝罪を繰り返すであろう少女が、少しでも心穏やかになれるしのぶからの言葉に実弥の表情はようやく綻んだ。
「そうかィ。色々助かった。遅くに手間ァかけさせたな、俺は一晩アイツの様子見てから屋敷に戻るわ。アイツが山に置いてきた荷物取りに行ってやらなきゃなんねェし」
「そもそも不死川さんも軽傷ではないので、入院が必要な身であることを忘れないでください。さて、風音ちゃん想いの不死川さん。私は少し体を休めますが、何かあれば遠慮なくどうぞ」
少し実弥を咎めながらもいつも通り怪我人を思いやってくれるしのぶに頷き返すと、実弥はしのぶと別れて風音が眠る部屋へと戻っていった。
やはりまだ目を覚ましてはいないものの、色々経験し恐怖した少女が穏やかに眠る姿を目にした実弥の緊張も解れ、体の力が急激に抜けるのを感じ取った。