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涼風の残響【鬼滅の刃】

第4章 お稽古と呼吸の技


懸念していた風音の深い眠りは、麓に到着してからのみ杞憂に終わった。
実弥に抱きかかえられて帰還を果たした風音の手を勇が握り呼び掛けると、驚くほどにバチッと瞼を開き勇を胸に誘ったのだ。

その二人の微笑ましいはずの行動が終わるまで、実弥は何だか複雑な気持ちで見守った。

そして更にそんな三人の様子を小芭内が微笑ましい気持ちで見つめた後、風音と無事に抱擁を終えた勇を引き受けて、隠と言われる鬼殺隊剣士を陰ながら支える任務の後処理部隊の者たちと共にその場を後にした。





「なァ、風音。お前、何で自分で腕を抉ったァ?稀血でもねェお前が……俺みたいに特殊な稀血でない限り、自ら体傷付ける必要なかっただろうが」

現在、実弥はしのぶが鬼殺隊に解放している蝶屋敷の一室にて、しのぶに適切な処置を施してもらいベッドで眠り続けている風音の傍らで寄り添っている。

ちなみに風音の怪我を見たしのぶは首を傾げて唸っていた。

『この傷、自分でつけたものではないでしょうか?角度的にも形状的にも、不死川さんが見た鬼が振り上げていた木の幹でつけるには……無理があると思います』

この言葉が実弥の頭を悩ませる要因となった。

あの鬼は一見すれば変わったところは見られず、腹立たしいくらいにいつも通り人を…… 風音を襲っていた。
一つ不自然だったのは自身の持つ爪や牙で襲っていなかったこと。

何故かあの鬼は食事になり得る風音を直接攻撃せず、わざわざ倒木を攻撃手段として敢えて選んだのだ。

「分っかんねェ!何個も頭悩ませる問題残して寝ちまいやがって…… 俺もお前が愛しいって言やぁ、もっと心配掛けねェでいてくれっかァ?」

起きていたならば喜び飛び上がっていたかもしれない実弥の言葉は風音に届かず、静かな寝息が聞こえてくるだけである。

少し物悲しくなったところで部屋の扉が開かれ、しのぶが物音を立てないよう気を遣いながら入って来た。

「胡蝶、何かあったかァ?まだコイツ寝てんぞ。下手すりゃ何日か目ェ覚まさねェんだろ?」

「そうですね。身体的にもそうですけど、精神的な疲労が酷かったので。精神的な疲労は不死川さんの知るところですが…… 風音ちゃんの身体的に関することを、師範である貴方にお伝えに来ました」
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