第24章 予知と鎮魂
一度は全ての共有を切った風音であったが、実弥たちと共有を再会させると同時に、可能な限りの剣士たちと再度共有させていた。
それはあの場にいなかった柱や継子たちも例外ではない。
そしてしばらくすると、送ってくれている先の光景に、風音の現状が実弥視点で断片的に……継続して紛れ込んで来た。
「胡蝶!記憶が零れ落ちていくと……風音が言っているように見えるぞ!」
風音が共有出来るのは光景だけ。
音までは聞こえないし、風音が受けている傷の痛みや感情ももちろん共有出来ない。
それでも風音の現状を知れたのは、風音が鬼舞辻に叫んだ姿を実弥が瞳に映したから。
瞳にしっかり映し……口の動きを鮮明に把握したからだ。
「そんな……そんな事今まで一度もなかったはずです。私が事前に知っていれば蝶屋敷に縛り付けてます……でも、もっと深く考えてあげるべきだったと……今になって思います」
風音自身が記憶が零れ落ちていくなど把握していなかったので、杏寿郎もしのぶも知る由もない。
二人だけでなく、静かに考えをめぐらせているであろう義勇も、その後に続くカナヲや炭治郎、伊之助から見ても、柱稽古で風音は何の問題もなく予知能力を使いこなしていた。
しのぶに至っては研究を共に行っている時に柱稽古や柱同士での手合わせの様子を聞いていたが、眠くなると言っていただけで、記憶が零れ落ちていくだなんて言っていなかった。
そのため眠気を抑える気付け薬の改良を共に行っただけだった……
「それは俺たち柱全員に言えることだ。だが今は後悔するより、何か手を考えてやらねばならない……が、もうすぐに猗窩座と鉢合わせるな。俺が先に出る!早く終わらせて策を考えるぞ!胡蝶、冨岡の後から君たちも後援をつとめてくれ!」
杏寿郎はそう言って日輪刀を抜き、半歩遅れて柱二人が続いて日輪刀を構え、更にその後ろから継子たちが日輪刀を振り上げる。
風音の記憶と引き換えに送られてくる光景は、奇しくも嫌に正確で鮮明だ。
全員がそれぞれの技の残影を刀に灯した次の瞬間、目の前に上弦の参……猗窩座が笑みを浮かべながら姿を現した。