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涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


「ゲホッ!痛……早く立たなきゃ……実弥君たちも……大丈夫かな」

所狭しと身体中傷だらけだが、どうにか運良く骨は折れておらず、腱も筋も切れていない。
現在、うつ伏せの状態で周りの状況が見えない状態なので、動かすだけで痛みを伴う腕に力を入れて起き上がる。

そうして風音の瞳に映ったのは実弥たちの姿ではなく、志半ばで命を絶たれてしまった剣士たちの悲しい亡骸だった。

虚ろな瞳からは無念が伝わってくるようで、風音の瞳が涙に滲む。

「間に合わなくて……ごめんなさい。もっと私が上手く貴方たちに伝えることが出来ていれば……」

体の痛みが吹き飛ぶほどの痛みが風音の胸を襲い、次に襲って来たのは激しい怒りであった。

「絶対許さない!切り刻んで何百回、何千回でも私が地獄にーーがっ……」

例え今以上に切り刻まれようとも記憶を失おうとも構っていられるものか。

半ば正気を失った状態で鬼舞辻に一矢報いようと立ち上がり振り向いた瞬間、首に強い衝撃と容赦ない力が加えられ、そのまま宙吊りになった。

誰がそんなことをとなど考えなくとも、目の前にいる者の姿を見れば一目瞭然である。

「塵屑……切り刻んでやる!原型なんて留めないくらいに……ゲホッ、切り刻んで地獄に落としてやるから!」

「やかましい蝿だ。貴様のこの状況では私に傷一つ付けることは叶わない。諦めて私の力となれ、先読みの小娘」

もう鬼になどするつもりはない。
そう言うかのように牙が風音の肩に近付いてくる。

憎き鬼殺隊の剣士などもう目に入れるのすら不快なのだろうが、風音からすれば憎き鬼舞辻に牙を立てられることほど不快なことはない。

「記憶、なくなっていいの?」

「……何?」

突然の、聞き捨てならぬ風音の一言に鬼舞辻の動きが止まる。

この言葉でも止まらなければどうしようかと風音は考えていていたが、上手く止まってくれて思わず笑みが零れた。

「……見る者は見る対象と感覚を共有してしまう。それにね、私もついさっき知ったんだけど、あんたたちの言う先読みの力を過度に使ったらね、記憶が零れ落ちていくんだよ。思い出も意思も目的も……使えば使うほど零れ落ちていく。あんたは何人の剣士たちの先を見るつもり?何人の先を見て、幾つの記憶を失くしていくの?」
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