第24章 予知と鎮魂
幾度か同じような遣り取りを繰り返した風音は、ようやく最後の剣士たちの集団を視界に映していた。
つまり鬼舞辻や、救いたいと切望する珠世の姿も確認出来たということを意味している。
「止まって!それ以上進まないで下さい!」
今までなら、風音の声を耳にした剣士たちは何かしらの反応を示していた。
だが少し先を行く剣士たちは、目の前に鬼舞辻がいるからか、全く反応を示してくれない。
鬼殺隊に所属する者は鬼に大切な人を殺された者が多いので、その元凶を目前に興奮状態に陥っているのだろう。
その気持ちは風音だって十分理解出来る。
父親は鬼にされ自身の手で亡き者とし、母親は鬼に殺された。
初めて自分から歩み寄り友となりたいと願った少女は、目の前で鬼に殺されてしまった。
鬼殺隊に入ってからは多くの剣士たちを看取り、平和に暮らしていたはずの人々の亡骸や、嘆き悲しむ遺族の姿を多く見てきたので、剣士たちの強い思いは痛いほど理解出来るのだが……
「止まってよ!私は皆さんに死んで欲しくないっ!貴方たちが居なくなったら、悲しむ人がいるんです!お願い……止まっ……ーー!」
喉が切れそうなほどに叫んでも、剣士たちは振り返ることすらなく、日輪刀を鞘から抜き出して、それぞれの呼吸の技の構えを取った。
それを感じ取ったのか、不気味な肉塊に姿を隠している鬼舞辻が動き出した。
「夙の呼吸 弐ノ型 吹花擘柳!」
まるでその場の命全てを喰らい尽くそうとするかのように、肉塊から伸びた無数の触手が、目に映らないほどの速度で剣士たちに襲いかかる。
どうにか一緒に朝日を笑顔で眺めたくて……
無我夢中で放った風音の技は、たった一人を庇うことしか出来なかった。
その剣士に再度攻撃の魔の手が迫る動きを見せた瞬間、一人と一体の間に割って入り、剣士の体を抱えあげて来た道を戻るように駆け出す。
青年の剣士の体の重さや、触手が肩を掠った際に噴き出した血を気にしている余裕などない。
「柊木さ……夙柱!血が!」
「私の傷は今更です!それより……」
もっと遠くへ……と続けたかった言葉は、喉から競り上がってききた鉄臭い液体によって阻まれた。