第24章 予知と鎮魂
「上弦の鬼でさえ、それほどの強さでした。鬼舞辻はその強さを遥かに凌駕します。……だからどうか今は退いていただけませんか?私は……」
まだ先を走っている剣士たちを止めなくてはいけない。
手遅れになる前に一人でも多く救わなくてはならない。
ここでこれ以上時間を割いてしまっては、救える命がどんどん手のひらから零れ落ちてしまう……
声に出せない言葉をやはり出すわけにはいかない。
剣士たちの鬼舞辻への積年の思いを無下にしたくないからだ。
それにここで納得してもらえなくては、先でも同じ結果が待ち受けていることは確実。
今後のことも含めた上でじっと剣士たちの様子を伺う。
しかし刻々と残酷に過ぎて行く時間に、焦燥や悲嘆など様々な感情が入り乱れ涙が競り上がってきた時、ポンと優しい力で肩を叩かれた。
「ごめんな、風音。俺たち、どうにかして風音の力になりたかったんだ。負担ばっかり掛けてるから……せめて時間稼ぎくらいはって。そんなこと風音なら分かってくれてるの理解してたのに……困らせてごめん」
勇の言葉を皮切りに剣士たち全員がしょんぼりと眉を下げて風音の周りに集まる。
我儘言ってすみません
時間無駄に使わせちゃって……
柊木さんにもらった物だけど、傷薬持って行って
今は無理でも後でちゃんと力になるから
助けに来てくれてありがとう
風音特性の傷薬を握らされ、次々と掛けられる言葉に右往左往していたが、感謝の言葉と共に全員から一斉に頭を下げられた風音は驚き飛び上がった。
「あ、あの……私の方がワガママ言ってるのに……本当にごめんなさい!えっと……」
剣士たちの言葉に見合う言葉を返さなくては……と涙目になる風音の体は、何人もの優しい力で前へと押し出される。
「雑魚鬼は俺らに任せてくれ!俺らは出来ることで風音たち柱を支えるよ。ほら、行った行った!」
「あ、え……えっと!こちらこそありがとうございます!必ず生きて、朝を迎えましょうね!私、人々のために戦える貴方たちが大好きです」
ふわりとした笑顔を残して去っていく風音の背中を見送る者たちの視線はそれぞれ。
ただ一人、勇だけは複雑な心境を表すように苦笑いを浮かべていた。