第24章 予知と鎮魂
爽籟が言葉を切ると同時に、まるで実弥を安心させるかのように楓視線の光景が頭の中に送り込まれてきた。
爽籟の言葉と風音の気遣いに心の中でホッと息をつき、実弥は更に速度を上げる。
「とりあえず全員一人じゃねェってことだな。玄弥は悲鳴嶼さんと合流出来たみてェだし……このままいけば俺らは全員生きて合流出来る。……俺らは……だけどなァ」
鬼舞辻と遭遇する前に、先程まで共に行動していた柱たちと玄弥は無事に合流出来る。
それは風音が見せてくれている光景で分かる。
だが全員無事でいられるのは実弥たちだけ。
つまり無事でいられない者たちも居るということだ。
愈史郎によって鬼舞辻の元へと向かう剣士たちに近い場所へそれぞれ送り込まれたが、全員を足止めするなんてことは不可能である。
大多数は救うことが可能だと考えられるものの、どうしても間に合わない剣士たちもいるのだ。
「切り替えられりゃあいいんだが……混乱して突拍子もないことしてくれんなよ」
「……風音ノ側ニハ楓ガイル。今ハ楓二任セルシカナイ」
呟くような実弥の願いはしっかりと爽籟の耳に届いた。
爽籟とて実弥と同様、犠牲になるであろう剣士たちの姿を見て悲しむ風音をどうにか励ましてやりたいが、物理的に不可能。
それならば風音と強い信頼関係を築き、なんだか風音ととても仲の良い楓に任せるしかない……
一人と一羽は目線のみを交わらせ、双方共に顔を顰めて頷き合った。
「楓がいりゃあ、アイツを落ち着けてくれるだろ。はァ……出来るだけ無鉄砲な奴ら引き返させるしかねぇな。爽籟は塵屑野郎の場所に近付き次第、離れて情報収集に専念しろ」
「分ッタ。……実弥!アソコニ剣士ガイルゾ!スグニ食イ止メロ!」
互いのしなくてはならない事を再確認し終えたと同時。
数人の剣士たちが脇目も振らず走っている姿が目に入った。
「言われるまでもねェ!……おい!お前らァ!そこで止まれェえ!」
根城内にいる者たち全員に届くのではと思えるほどの怒号は剣士たちの足を止めさせた。
……しかし実弥のあまりの勢いと怒りの形相に、剣士たちは逃げ惑うように、物理的に足止めされるまで全力で駆け出したらしい。