第24章 予知と鎮魂
「どうなってやがる!悲鳴嶼さんと時透は兎も角としてだ!風音と玄弥ともはぐれちまったじゃねェか!あの野郎……」
突如として強制的にそれぞれの場所へ放り出された一人である実弥。
そんな実弥の脳裏に浮かぶのは、はぐれる前に風音が送り出した先の光景と、この決戦で鬼殺隊に尽力していると耳にした、未だ顔すら見たことのない青年の姿の鬼、愈史郎だった。
耳にしたというのは、風音から耳にタコが出来るのではと危惧するほどに聞かされたからである。
「胡蝶と研究してたんだったら、風音を一人にすんのが一番良くねェって聞かされてたはずだろ?!何考えて……」
風音から何度も聞かされたのは
決戦で必要不可欠な様々な研究の要である、珠世という鬼がいる
とても頭が良く鋼の精神で鬼舞辻の支配から逃れた
長い年月をかけて、鬼舞辻を倒すため研究を独自に行っていた
目眩がするほどに綺麗でとても優しい
だから大好き!
珠世に関してはこんなことを研究から帰る度に聞かされた。
そして現在、実弥の頭に浮かんでいる愈史郎に関しては
優秀で珠世の右腕
しのぶにも引けを取らない頭脳で爽やかな顔立ちの青年
たまにお口が悪さをするが、珠世が止めるとすぐに止まる
何より誰より珠世が大好き
私が実弥君のこと大好きなのと同じくらい!
とのことだ。
ちなみに似顔絵を描いて見せてくれたが、何分風音は絵が壊滅的に下手なので、頑張って理解しようとしたものの、実弥にはどうしても容姿を理解することが不可能だったらしい。
それは兎も角として、風音から聞かされていた愈史郎の話しで、愈史郎の意思が汲み取れてしまった。
「……珠世って鬼を助けろってことかよ。鬼の癖に俺らを利用しやがって……はァ……おら糞鬼ィ!アイツら誰か一人にでも被害被らせてみやがれ、そん時は俺がテメェの頸斬ってやらァ!」
近くにいないのだろう、愈史郎から返事は返ってこない。
その代わりに聞き慣れた頼もしい声が背後から聞こえた。
「実弥!風音ナラ問題ナイ!楓ガ側ニイル!他ノ奴ラノトコロニモ鴉ガ追イツイタ!」