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涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


つまり風音は今正に非常に良くない状況に立たされている。

が、驚き立ち止まった風音の表情に焦りは見えない。

「愈史郎さんだ。愈史郎さんが肆の意識を乗っ取って私たちを移動させてくれたんだ……ここからなら間に合う!」

行動を共にしていた皆とはぐれる寸前、風音は咄嗟にその場にいた全員の先を望み、共有することを忘れなかった。
そして再度走り出した風音の顔に苦笑が浮かぶ。

「実弥君、すごい速度。……これ、絶対怒ってるよね……ってあれ?!私一人じゃ私が道分かんないよ!愈史郎さん!このまま道なりに進めばいいんですか?!」

問題発生。

あのまま皆で進んでいたならば、先に得ていた情報で間に合うのかは別として、剣士たちのいる場所まで辿り着くことが出来ていた。
しかし突然土地勘の全くない場所に一人放り出されたことにより、自分の先が見えない風音は鬼の本拠地内で迷子である。

「……どうしよう。さっそく前方に分かれ道。どっちに行けば剣士の皆さんのところに行けるの?勘……」

「風音サン!」

天からの助けと言うのだろう。
何とも絶妙な頃合で、長年共に任務をこなしてきた可愛らしくも頼もしい相棒の声が、風音の鼓膜を優しく刺激した。

「楓ちゃん!良かった!楓ちゃんともはぐれちゃったかと……追いかけて来てくれたの?」

「ハイ!風音サンノ姿ガ何カニヨッテ遮ラレル寸前デ、ドウニカ追イツキマシタ!ドウゾ、私デ先ノ光景ヲ見テ下サイ!」

「ありがとう……楓ちゃん、私の肩に乗ってもらっていい?」

いついかなる時も寄り添ってくれる楓に涙腺が緩む。
だが涙を流すわけにはいかないので、離れてしまわないよう肩に楓を呼び寄せ、肌触りのいい羽にそっと頬を擦り寄せた。

「これで私も先回り出来る。実弥君、無一郎君の所にも爽籟君と銀子ちゃんが。玄弥さんは悲鳴嶼さんと合流出来たし、榛君も絶佳君もいてくれてる。本当にありがとう……よし!全速力で向かうから、しっかり掴まっていてね!」

それぞれが別の場所へ放り出されたが、それぞれが無事に信頼出来る仲間たちと合流出来たことに安堵した風音は、楓が肩にキュッとしがみついたことを確認すると、剣士たちを一人でも多く救うために速度を上げた。
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