第24章 予知と鎮魂
「ふむ……柊木。一度先を送ることを中断しなさい。剣士たちがこれ以上先を見なければ、鬼舞辻の元に辿り着くまでの時間を稼げるやもしれん」
無一郎の提案に目を輝かせたのも一瞬。
行冥の指示に不安げに瞳を揺らせた。
「でも……私たちが間に合わなかった場合、剣士の皆さんは柱がいない状態で何の情報もないまま塵屑野……鬼舞辻と戦うことになります。今の私の状況だと、離れた場所にいる人との繋がりを切ってしまっては……もう一度繋ぎ直すことが出来るかどうか」
今、風音はぎりぎりのところで、この鬼の本拠地内にいる剣士たちと繋がっている状況だ。
本拠地内が上下左右関係なく広大な上、自身の体は上弦の鬼との連戦で多くの傷を負っている。
更には柱のみならず剣士たち全員が広大な本拠地内を縦横無尽に駆け巡っては、無数の鬼と刃を交えて戦闘を繰り広げている。
目まぐるしく状況が変化する中、最善と思われる先を常に送り続けているものの、自身が負った傷の痛みや吐き気をもよおすほどの熱で脳が逆上せた満身創痍な状態で、一度繋がりを切ってしまえば、再度皆と繋げることが難しいのだろう。
繋げ続けても繋がりを切っても被害が出る現状に胸の内が暗く沈む風音の頭の上に、ポンと優しい温かさが添えられた。
「今のままじゃあ、お前が一番望まねぇ結果になっちまう。塵屑野郎までの道が分かってんなら、今すぐ切れ。んで無鉄砲な馬鹿共追い抜いて先回りすんぞ……出来るなァ?」
静かながらも有無を言わさぬ実弥の声音に、風音は一度強く目を瞑り小さく頷き返す。
「はい……今、切りました。えっと……あそこの階段を下って……?!実弥君、皆さん!三秒後!」
皆が風音の言葉を聞き終わるまでに三秒経過した。
つまるところ何の心の準備も出来ていない状態。
そんな状態で、皆の目に映る景色が、まるで紙芝居の頁が捲られたかのように突如として切り替わった。
……それぞれ別の景色である。
それぞれ別の景色ということは、現在風音は一人ぼっちだということ。
開戦前に
絶対一人になるな
と実弥を初めとした柱たちに懇々と言い聞かせられていた。
それは風音が上弦の鬼と一人で会敵し、人知れず鬼にされたり殺されてしまったりすることを防ぐためである。