第24章 予知と鎮魂
……要約すると
とりあえず大人しく座っていろ
とのことだ。
皆、自身の傷も痛むに違いないのに、手を煩わせている現状は風音の気持ちを一気に正常値へと戻した。
「す、すみません!あの、自分の怪我くらい自分でどうにかするので」
『大人しく!』
「……はい。すみません……よろしくお願いします」
怒られてしまった……
しかし気持ちが正常値に戻った風音はしょぼくれない。
皆が処置をしてくれている間に皆の怪我の位置を確認し、自身が動ける状態になった時に戸惑わず、迅速に全員の処置を終わらせる手順を頭の中に巡らせることにした。
「愈史郎さんが鬼の意識を乗っ取って、この地下を外に押し出してくれるでしょう?だから愈史郎さんなら、塵屑野郎のところに誘導してくれるんじゃないかって思ったんです。現状、あの場に最速で到着するにはそれしか手がないかと……はい!実弥君の処置もこれで終わり!改めまして……たくさんご迷惑おかけしてすみませんでした……」
気を持ち直した風音の処置を皆で終わらせると、今度は風音が頭の中で巡らせた順番、手順通りに皆の処置を次々と施していった。
その間の時間も無駄には出来ないと、これからどう動いていくかを皆で話し合うこととなった。
風音はしのぶから処置に関する手ほどきを受けていたので、話し合いに参加しながらも的確に処置を完了さていく。
そして最後の一人である実弥の処置を終わらせると突然立ち上がり、皆に向かって深く頭を下げた……のが今の状態だ。
「何回謝れば気がすむんだよ……誰も怒っちゃいねぇって言っただろうが、ったく。とりあえず、その……愈史郎だっけかァ?そいつに頼らなきゃなんねェにしても、道分かったんなら塵屑野郎んとこ向かうぞ。で、今から向かったとして何分足りねェんだ?」
「返す言葉もございません……えっと、手当てで五分使ったから……足りないのは二十五分くらいかと」
二十五分を巻き返すのは厳しいかもしれない。
風音から聞いた場所はこの部屋から随分と離れているので、物理的に間に合わすのはほぼ不可能だ。
だからといって諦めなど誰の頭の中にも浮かばなかったので、誰からともなく立ち上がって走り出した。
「ねぇ、剣士たちが到着する前に、俺たちが剣士たちを止めればいいんじゃない?」