第24章 予知と鎮魂
理解していたはずだった。
柱合会議で先を何度も繰り返し見る中で、多くの命が失われる瞬間を何度も見ていたからだ。
しかし先ほど流れてきた光景は見たことがなかった。
それはもちろん、その場に柱が辿り着いて居なかったからである。
珠世が鬼舞辻に取り込まれてしまうと情報だけで知っていたが、その場が何処か判明せず、どうしても鬼舞辻の居場所を特定出来なかった。
そしてその場でこれほどまでに多くの剣士たちが、鬼舞辻復活の糧とされるなど知る由もなかったのだ。
それ故に風音がその現場の光景を見て、取り乱した。
実弥を責めたくて取り乱したのではなく、あまりに悲しく辛い光景に取り乱したのだが……取り乱したことを風音は激しく後悔した。
(どうして上手くやれないんだろう……実弥君を責めたかったんじゃないのに、結果的に実弥君に罪悪感を抱かせてしまった。せめて……せめて早く怪我をどうにかしないと。……手の震え、止まってよ!)
再度実弥に促され地面に座り込んで鞄の中から処置道具一式を取り出し処置を試みるも、様々な感情が入り乱れた風音の手が震え、思うように進まない。
「早く……処置終わらせるから。置いてかないで……」
涙をぽろぽろ零しながらも懸命に薬を塗り込む震える手から、優しく薬を掬い取られた。
そして道具一式をまとめている場所へと次々と手が伸び、消毒薬やら包帯やらが掬い取られていく。
その様子を真っ赤な泣き腫らした目で追った後、薬や道具を手に取った柱たちと玄弥をくるりと見回すと、全員がまるで風音を落ち着かせるように笑みを向けてくれていた。
「あの……」
戸惑い悲しみに揺れる風音に皆は頷き、各々が傷だらけの風音の処置に移行した。
「頼れっつっただろうが。外傷的にも一人で処置するには限界があんだろ……泣いてて構わねェから、お前はじっとしてろ」
「この怪我はさっき言ってた剣士たちが先で負った傷でしょ?それなら柱である俺たち全員で対処しなきゃ。じっとしててね」
「柊木一人に辛いことを背負わせてしまっているな。すまない……せめて私たちが君の処置をする間、休んでいてくれ」
「えっと……上手く言えないけど、ここに居る全員、風音のお陰で生き残れたんだよ。……俺、処置するの慣れてないから大人しく座っててほしい」