第24章 予知と鎮魂
「イヤ……まだ休むなんて出来ない!」
実弥の腕から逃れ、驚き目を見開く実弥や他の三人の間を縫って、血を滴らせながら風音は部屋の何も無い場所まで走り去ってしまった。
「愈史郎さん!お願いします、ここに入り口を出して下さい!お願い……ゲホッ……お願いします!死なせたくない!珠世さんも剣士の皆も死なせたくないの!お願いします!」
大きな声は震えており、泣いているのだと誰もが理解出来るものだった。
しかもそれに伴うように体も不安定に揺れている。
実弥は舌打ちをして風音の側に再び走り寄り、体を支えながら座るよう促した。
「落ち着け……今お前が叫んでどうこうなる問題なのかよ?まずは何があったか俺らに話せ、どうにかしてやるから」
「鬼舞辻の復活が早まってしまうの!私が剣士の皆に先を送ったものだから……ゲホッ、鬼舞辻のところに何にも目もくれず向かってる!殺されてしまうって分かってるはずなのに!私は生きて欲しいから先を送ってたのに……こんなことを望んだんじゃないのに!」
吐血し咳き込みながら……何もない空中に腕を伸ばし、まるで剣士たちの命を生へ引っ張ろうとするような風音の行動、悲痛な叫びに実弥の目が悲しげに細まる。
「イヤだ!ここからじゃどう頑張っても間に合わない!誰も足を止めてくれない!どんな未来を送っても、鬼舞辻に一死報いようとする皆の気持ちが止まってくれないの!待って……置いていかないでよ……ああぁぁあーー!」
風音の頭の中に流れたであろう凄惨な光景が容易に想像でき、実弥は泣き叫び腕を伸ばし続ける風音の体を強く抱き締めた。
「悪ィ……こうなるかもしれねぇって分かってて、俺はお前を柱に推薦してここに連れて来ちまった。ただ……諦めてくれんなァ。泣き叫んで、目の前にねぇもん掴もうったって届きゃしねぇんだ!自分責めんなら俺を責めろ!責めて……間に合わせる手筈考えろ!一人で答え出ねぇなら、俺たちを頼れよ!」
実弥の言葉に、伸ばされていた腕は暖かく大きな背中に回され、悲壮に満ちた顔は肩口に埋められた。
「……お前が今しなきゃならねぇこと、分かるなァ?助けに行くにもそのままじゃ行けねぇだろ」
「はい……すぐに傷の処置をします……ただ一つだけ……私は実弥君を責めるなんて絶対しない。私の覚悟が不足してただけだから……」