第24章 予知と鎮魂
「お前は下がってろォ!ここまで追い詰めりゃあ、俺たちだけで十分だ!いいか、俺たちに先の光景も送るんじゃねェ。大人しく指縫合しとけ!」
ヨロヨロと足をもつれさせ尻もちをついた風音にそう言い残し、実弥は今まさに鬼に日輪刀を振り上げた行冥の元へ駆け出してしまった。
しかし実弥が目的の場所へ到達する前に体がビクリと震え、その体から途轍もない怒りが滲み出る。
「後で叱られても、私だけ休むなんてしたくない。……せめて先の光景は送らせてもらうから」
実弥が怒りをあらわにしたのは、風音が言うことを聞かず先の光景を自分たちに送ってきたからだったようだ。
しかし風音とて柱としてこの決戦に赴いている。
戦力としてはもちろんであるが、何よりこの生まれ持った能力で鬼殺隊剣士たちの役に立つために……だ。
たが後々の鬼舞辻戦に備え指をどうにかすることは実弥の言う通り必須なので、終わりが近付いているであろう戦いを視界に映しつつ縫合を開始した。
風音からの光景がいくら実弥を苛立たせていたとしても、それにばかり気を取られるわけにはいかない。
風音が自身に出来ることで戦闘に参加しているのだから、実弥も持てる力全てを使って鬼の頸を落とさなくてはならないからだ。
「時透ーー!そのまま糞野郎の体抉りきれェ!悲鳴嶼さんに繋げろォ!」
「ーーっ。はい!風音ちゃんからの光景通りにいきますよ!」
無一郎も実弥と同じ感情を抱いているのだろう……
いや、無一郎にいたってはそれ以上かもしれない……本来自分に向かったはずの攻撃を風音が受けて、指に怪我を負ったのだから。
それでも……風音に思うところがあったとしても、顔を顰めながら刀を振り上げたのは、早くこの戦闘を終わらせて風音の負担を軽減させるためだ。
「早く地獄に行ってよ……これ以上あの子を傷付けるな」
静かな無一郎の怒りの声が鬼の耳に届いたと同時に、鬼の右肩から先が床へと切り落とされ、辺りを赤く染めた。
そして行冥の日輪刀の鉄球部分が鬼の頭を直撃し、実弥の日輪刀が上から振り下ろされて、頸から上が消滅した。