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涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


時は少し遡り、己の成すべきことの数を絞った風音が動き出した頃。

「私がまずするべきことは、あの鬼を誰かのところに留まらせないこと。誰も鬼になんてさせない」

先ほどの鬼との遣り取りが聞こえていなくとも、血塗れの手を口の中にねじ込まれていた状況を目にすれば、柱ならそれがどのような意味を指すのか間違いなく理解しているだろう。
それでも目の前にいる鬼は柱四人と玄弥で相手取っても、苦戦するような凶悪な強さを誇っているのだ。

どれだけ警戒していても不足はない。

風音は鬼の間合いからギリギリ外れる位置で一度立ち止まり、鬼の位置や実弥たちの動きを再確認する。

「……実弥君と悲鳴嶼さんは鬼から少し距離を取ってる。無一郎君は近距離……さて、ここからが正念場。踏み込み過ぎず、怪我を最小限に」

風音は鬼から目を離さぬまま大きく息をつき、入り乱れている頭の中の情報を整理した。

「好機はほんの一瞬……あと五秒」

整理した先の光景の一瞬を見逃さず、鬼の頸を確実に落とすために走り出した。

そんな風音の瞳に映し出されたのは、無一郎が鬼の懐に滑り込み、腹に赫刀を突き刺した光景と、行冥とその後を追うように駆け出した実弥の姿。

「大丈夫……死なないし怪我も最小限。無一郎君にしたお約束も果たせる」

無一郎の渾身の一撃に怯む鬼が血気術を放とうと刀を振り上げたと同時に、風音は鬼の右側に滑り込んで、背後からの発砲音と共に赫く染まった日輪刀を振り上げた。

「夙の呼吸 壱ノ型 業の風」

発砲音は玄弥が鬼に鉛玉を撃ち込むために放たれたもの。
その鉛玉は無一郎によって動きを封じられている鬼の体を貫き、玄弥が鬼を喰らい手にした血気術のようなもので、体内から木を張り巡らせ更に体を拘束した。

そして風音の放った技は血気術を放った直後の腕を切り飛ばし、無一郎に向かうはずだった攻撃は大きく軌道を外れて空を切り……風音の左中指の付け根付近を襲った。

「風音ちゃん!指が」

「うぅっ……痛……くない!無一郎君はそのままで!私は……うひゃっ?!」

無一郎が目を見張り風音が痛みをおして日輪刀を鬼に突き刺そうとした瞬間、軽い体が優しい力で押し飛ばされた。
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