第24章 予知と鎮魂
槇寿郎は自身が柱であった時の実弥の様子をもう一度頭の中で巡らせる。
しかし思い浮かぶのはやはり険しい表情で鬼狩りに赴く姿だけであった。
だが、槇寿郎が初めて風音と出会った時の実弥の様子がふと思い起こされ、僅かに目元を緩ませる。
「そう言えば、あの子に向ける雰囲気は柔らかかったように思う。あの姿が本来の不死川の姿なのかもしれんな。それならば確かに失わせたくない気持ちが分かる……」
「あぁ。それに嬢ちゃんも嬢ちゃんで、所構わず惚気けるくらい不死川のこと大好きみたいでよ。……不死川が深手を負いそうになった時の嬢ちゃんの行動を考えると、身が竦む思いなんだわ。不死川が持ち堪えられる傷だったとしても、嬢ちゃんにはとっては致命傷になりかねねぇだろ?」
自分で不吉なことを口にした天元も、不吉なことを聞かされた槇寿郎も、その時の光景を思い浮かべて体をブルリと震わせた。
そして顔を見合せ、大きく息をついて項垂れる。
「やめろ……縁起でもない。あの子は先が見えるのであろう?それならば致命傷になるような怪我は避けるはずだ」
「旦那は嬢ちゃんの性格知らねぇからそう言えるんだよ……鬼殺隊内で嬢ちゃんがなんて言われてると思う?鬼に容赦ねぇ跳ねっ返りだぜ?跳ねっ返りなことした後は、絶対怪我負ってんだよ」
……槇寿郎の動きと呼吸が止まった。
そしてそこへ更に追い討ちをかけるように鴉からとんでもない言葉がもたらされる。
「夙柱様、負傷!指ガ……」
言葉の途中で天元は鴉を両手で抱え上げ、息がかかるほどにまで顔を近付けた。
「指がどうなった?!」
「まさか切り落とされたのであるまいな?!どうなのだ?!」
天元のみならず槇寿郎も顔を近付け鴉を問いただし始めてしまった。
元柱二人の迫力は凄まじく、鴉は体を小刻みに震わせながら言葉を続ける。
「切リ落トサレル寸前ダッタヨウデス。赫刀ヲ鬼ノ身二深ク突キ刺シタ……霞柱様ヲ守ルタメ、ソノ隙ヲ狙ウ風柱様ノ道ヲ作ルタメニ……今ハ下ガッテ、先ヲ皆サンニ送リ後援二入ッタヨウデス」
その言葉に二人は身を強ばらせ、痛みを我慢するようにきつく目を閉じた。