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涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


「ぐっ……何を」

その伸びた手は風音の首を易々と締め上げ、気道を圧迫した。

痛み、息苦しさ。
もちろんそれらが風音を襲っている。

しかしこの危機的状況で計らずしも鬼に触れ、これから何が起こるのかが頭の中に映し出されて、身体的苦痛を凌駕するほどの戦慄が走った。

そのままの状態で強制的に地面へと叩き付けられ地面に拘束される。

遠くか近くか……
曖昧で現実に聞こえているのか定かではないが、実弥が玄弥に何か指示を出しているように感じる。

「月の呼吸ーー」

風音を鬼から解放するために実弥たちが技を放つも、新たな血鬼術で弾かれ阻まれる。
この僅かな時間の間で風音の手から日輪刀が鬼によって弾き飛ばされ、目の前に血に濡れた腕がかざされた。

「あの方がお前の力を欲している。先読みの力、あの方に使ってもらうがいい」

「やめ……ゲホッ嫌っ!鬼になんて」

鬼になるには鬼舞辻無惨の血を体内に入れられる事が条件だったはず。

しかし今の鬼の言葉を聞く限り、鬼舞辻無惨でなくとも人間を鬼にする手段があるのだと嫌でも知らしめられた。

いくら先が見えていると言えど、風音はこの部屋外にいる柱を含む剣士たち全員の先を見てはその光景を本人たちへ送り続けている。

今の状況では、もはやどれが自身に該当する先なのか判断出来ないほどに混乱していた。

そんな中でも鬼になるものかと、瞳に涙を浮かべながら首にある痛みや息苦しさを無視して体を捩らせるも全く意味を成さない。
風音の力など鬼からすれば赤子が身動ぎする程度のもでしかないからである。

そして鬼は更に部屋中へ血鬼術を放つと、無情にも無理矢理に風音の口の中へ手を捩じ込んだ。

「がっ……うぐ……」

口の中に生暖かく鉄臭い液体が流れ込んでくる。
それを嚥下しないよう舌で阻むが、気道を圧迫されており肺に空気が行き届かない状態なので、苦しさから否が応でも飲み込んでしまうのは時間の問題。

(嫌!鬼になりたくない!先……先を見て回避する方法を)

混乱するほど脳内に溢れている光景の中から自身の先を探し始めてすぐ、遠ざかりつつあった周囲の音に紛れて耳に鮮明に破裂音が鳴り響いた。
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