第24章 予知と鎮魂
手渡した鬼の腕を掴み取った玄弥の表情が僅かに強ばった。
見られることに抵抗があるのかないのか、はっきりとは断定出来ない。
だがどちらにしても風音の気持ちを慮ってくれた事は確かであるし、一刻も早く戦闘に戻り皆の負担を減らすことが今風音のするべきとこだ。
それに風音には変えなくてはいけない未来がある。
「分かりました。私は戦闘に戻ります。ただこれだけは覚えていてほしい。私はもちろん実弥君も無一郎君も悲鳴嶼さんも、玄弥さんの特異能力を気味悪いだなんて絶対に思いません。身を呈して人を守る姿、凄くカッコイイです!」
キリッとした表情で握り拳を胸の前で作った風音は目を丸くする玄弥に頷き返し、その一瞬後には瞳に独特な色を浮かべながら身を翻した。
その後、玄弥の顔が瞬く間に赤くなったことはもちろん知る由もない。
(鬼に触れるためには動きが止まった一瞬を狙うしかない。先を見ても目まぐるしく変化しちゃうから、まずは変えなきゃいけない先を変えてから考えよう)
混乱状態から抜け出した風音はしなくてはいけないことを頭の中で整理し、今まさに自身の指を落とすであろう血鬼術を避けるために体を半歩ずらした実弥の背後に向かった。
「実弥君の何も奪わせない!夙の呼吸 弐ノ……え?!」
技を放とうと構えた瞬間、鬼の瞳が実弥から風音へと移動して固定され、焦りから全身から冷や汗が吹き出し先の光景も途絶えてしまう。
「月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え」
「ーーっ!夙の呼吸 肆ノ型 飄風・高嶺颪」
前方から尋常でない速さの斬撃が五つ迫り寄ってくる光景が映し出され、咄嗟に技を切り替えて跳躍すると、実弥たち柱と玄弥がそれぞれ攻撃を叩き潰そうと動き出す。
全ての技を受け流すことなど出来なかったが、残った一つならば受け流せると、風音は迷うことなく刀を振り切った。
「風音!そこから離れろォ!」
無事に技を技で受け流すことが出来た。
あとは再び技を放ち、どうにか鬼に触れなくてはと考えていたのに、実弥の切羽詰まった声音と目の前の光景に頭の中が真っ白になる。
流石上弦の壱と納得せざるを得ない跳躍力で、風音の目と鼻の先で鬼が手を伸ばしていたからだ。