第24章 予知と鎮魂
「待って、玄弥さん!そんなことをしたら!」
背に庇われた風音の全身に生暖かい液体が降り注いだ。
それと共に玄弥を呼ぶ三人の声が耳にやけに明瞭に届き、ようやく目の前で何が起こり、自身の体を濡らした液体が何なのかを理解した。
「どうして……玄弥さん!しっかりして!こんなのって……」
玄弥の体が腰辺りから両断されていたのだ。
傷口からは血が止めどなく流れ出ており、風音の全身に降り注いだのは、玄弥の体が両断された際に飛び散った血だった。
「大丈夫……だから。俺より鬼を」
「風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐」
両断された体をどうにかしなくてはと下半身に手を伸ばしたところで、何かが弾き飛ばされる音と、体が吹き飛ばされそうなほどの風が吹き荒れ、風音は我に返って鬼へと視線を戻す。
するとそこにいたのは鬼ではなく、風音が絶対的な信頼を寄せる人物。
……その表情は見なくても分かる。
後ろ姿であってもその人物、実弥からは空気が張り詰めるほどのものが滲み出ているからだ。
「よくも俺の弟を切り刻みやがったなァ……許さねぇ、絶対許さねェ!ぶっ殺してやらァ!風音ーー!お前もぼさっとしてんじゃねェ!殺されてェのか!」
実弥の怒り、激しい叱責に風音はシャンと背筋を伸ばし、握ったままだった日輪刀を振り上げて、そのままの体勢で技を放った。
それに続き実弥が技を重ねると、ようやく鬼の腕に届き、ぼとりと不気味な音を立てて床に落ちる。
その腕を一瞥すると実弥は二人に痛みをこらえたような視線のみを残し、無一郎たちと合流すべく体を動かした。
一刻も早く風音も合流しなくてはならないが、実弥が自分をここに残したということは、玄弥の今の状況を改善させろということだ。
風音は流れ出そうになる涙を押し戻し、玄弥の手首に手を当てて脈を確認した。
「脈は……正常。玄弥さん、先を見る限り胴体と下半身をこのままくっつけても大丈夫だと思いますが……くっつけてもいい?私もこうした事例は初めてで未知の領域なんです」
「うん、頼んでもいいかな?それと……その後で構わないから、あそこに落ちてる腕を持ってきて欲しい」