第24章 予知と鎮魂
「やれば出来んじゃねェか!風音ー、技を受けるなんざ考えんなァ!受け流して次に繋げろォ!」
前に飛び出し鬼の血鬼術を受ける風音は力が弱い。
鬼の頸を斬るには不足ないが、この場にいる誰よりも力が弱く、一般剣士と比べても力に関しては弱い分類に振り分けられるだろう。
そんな風音が上弦の壱の攻撃を受け切るなど至難の業。
そもそも実弥たちであっても押し負けそうな勢いの技に近付くことすら難しいのだ。
今もその状況は変わっておらず、行冥が参戦したと言えど防戦一方である。
「はい!私は大丈夫だから……?!玄弥さん!そこから離れて!」
実弥の助言通り受けるから受け流す動きに変えた直後、風音の頭の中に流れ込んできたのは、死角から銃弾を浴びせ続けている玄弥へと、鬼が迫りよる光景だった。
無一郎や行冥は足止めにと放たれた血鬼術で玄弥の元へ駆け寄ることが出来ない。
実弥は風音の声に反応してそちらへ向かっているが、距離的に考えれば風音が一番近く、玄弥をギリギリ庇うことが出来るだろう。
そう確信を得た風音は頭痛や怪我の痛みにふらつきそうになる体を叱責し、足を玄弥の方へと動かし声を張り上げた。
「玄弥さん!銃を投げ捨てて日輪刀を構えて!私を信じて下さい!」
「え?!」
「玄弥ーー!銃寄越せェ!」
二人から銃を投げ捨てろと言われた玄弥は戸惑いつつも、どうにか銃を実弥の方へと投げ捨て、今まさに刀を振り上げている鬼に対して日輪刀を構えた。
一撃目を後退しながら受け流し、首目掛けて振り上げられた二撃目を躱さなくては……と腕を動かしたところで、血で汚れながらも尚鮮やかさを保っている菊の羽織が瞳いっぱいに映し出される。
「風音……」
「夙の呼吸 壱ノ型 業の風」
刀同士がぶつかり合う金属音が部屋中に響き渡った。
続いて少し離れた場所からは銃声が鳴り響き、その際に放たれた銃弾を鬼が防ぐ隙に風音は玄弥を庇うように覆い被さる。
僅か数秒の出来事が緩慢な動きで玄弥の瞳に映り、自身も体制を整えなくてはと、何故か覆いかぶさっている風音を引き離そうとして……反射的に細い腕を引っ張って背後へと隠した。