• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第24章 予知と鎮魂


速度も威力も技そのものを完成させた時よりも桁違いに上がっている。
それは今現在上弦の壱の肌を切り裂いていることが証明している。

だが上弦の壱をこれだけの技で地に伏せさせることなど叶わない。

技を放った風音がそのことは一番理解している……この場の誰よりも遥か先の未来を見ているからだ。
先を見ているということは、これから自分たちに何が降りかかるのか分かっているということ。

何を優先しなくてはならないのかを考えた結果、風音は何かを切り捨てる道を選んだ。

(あと少し……悲鳴嶼さんが来てくれるまであと少しなんだ!でもこのままじゃ……考えてる暇ないか。なるようになれ!)

死角から銃撃音が絶え間なく響き、誰もが警戒を一切怠ることなく新たに技を放とうとする中、風音は一度皆の頭の中から先の光景を排除し、大きく声を張り上げた。

「七秒後、風四時に三、霞六時に五!」

突然の簡潔な指示に一瞬戸惑ったものの、風音の言葉が何を指すのか瞬時に導き出し、鬼が行動を起こす寸前で指示に忠実に従う。

嫌な予感を胸に燻らせながら……

四時の方向に三歩、六時の方向に五歩下がった実弥と無一郎の瞳に映し出されたのは、まるで庇うかのように背後から飛び出してきた風音の姿だった。

「風音!お前」
「風音ちゃん!」

「月の呼吸 陸ノ型 常夜孤月・無間」

「夙の呼吸 参ノ型 凄風・白南風!」

上弦の壱相手に柱一人の防御など台風を前にした紙切れも同然。
例え先を見ていたとしても、実力差は埋まるはずもない。

容赦ない鬼の血気術に血飛沫が辺りに飛び散る。
辛うじて四肢の欠損はしていないが、立っているのもやっとなほどの裂傷を負う姿に堪らず二人が動こうとするも、実弥ですら聞いた事のない叱責が部屋中に響いた。

「動くなぁ!」

そしてその叱責の後に先の光景が再び二人に流れ込んできて、動き出す合図である技名がようやく風音からもたらされる。

「夙の呼吸 漆ノ型 裂葉風・改!」

技を鬼にみまい終えた風音が一旦後ろへ下がると、入れ替わるように二人が険しい顔で横をすり抜けて行った。

「風音ー!後で覚えてやがれェ!風の呼吸ーー」

「……俺も怒ってるから!霞の呼吸ーー」

不穏な言葉を叫びながら。
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp