第24章 予知と鎮魂
「実弥君、無一郎君が上弦の壱がいる部屋の前に辿り着いた!どうする?立ち止まって息整えてもいいと思うんだけど、私はどちらかと言うとこのまま突っ切りたいなぁって」
「……風音ちゃんよォ。さすが俺の惚れた女だァ!面白ぇ、このまま突っ切んぞォ!上弦の塵屑の頸もついでに吹き飛ばしちまえ!」
こちら気持ちを切り替え涙を拭いた風音と、それを見守り傍らに寄り添い続けていた実弥。
無一郎が小さく笑みを零してすぐまで時は遡る。
鬼に対して好戦的な風音の発言は、同じく鬼に対して好戦的な実弥の琴線に触れたようだ。
「はい!大好きな実弥君が一緒に扉吹き飛ばしてくれるなら、鬼の頸もついでに斬れる気がしてきた!合図は私が次に声出した時だよ!」
「あぁ!一緒に技ぶちかましてやらァ!」
……惚気合い……になるのだろうか?
どちらとも頬は赤く染まっていないので、惚気合いというより互いに焚き付け合い士気を高めているのかもしれない。
その証拠に二人の先を見つめる瞳は見るものが見れば……いや、見るもの全てが身震いするほどに鋭い光を放っていた。
(あの角を曲がった突き当たり。無一郎君の姿が見えて三秒後!もうすぐ……)
角を曲がり二人の鋭い光を放つ瞳に映し出されたのは、天才剣士と名高い少年の後ろ姿。
事前の柱合会議で取り決めた通り、二人の到着を待っていてくれていた無一郎の後ろ姿だった。
その姿を見た風音は大きく息を吸い込み声を張り上げる。
「無一郎君!扉吹き飛ばすから避けて!」
張り上げた声は無一郎を巻き込まないための合図。
そして実弥と技を合わせる合図である。
「夙の呼吸 漆ノ型 裂葉風・改」
「風の呼吸 弐ノ型 爪々・科戸風」
無一郎が肩を震わせ飛び退くのは視界の端に映っていた。
しかし何故震わせたかなど今の二人に考える隙はなく、懇親の力で日輪刀を振り切り、言葉通り扉を吹き飛ばした。
そしてその先に居たのは、目が六つある上弦の壱。
突然の柱達の奇襲に僅かに動揺し目を見開いたがそれも一瞬。
「頸ィ……洗って待ってたかよ、塵屑野郎!テメェの存在なんざすぐ塵にしてやらァ!」