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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


力任せに押さえつけようとしても風音は聞いてくれない。

それならばと、風音が慕ってくれている自分たちを信じるように……としのぶは言い聞かせることにしたようだ。

それでも完全に納得していない表情をしているが、しのぶや実弥、カナヲや伊之助までもが心配げに眉をひそめている姿を見てしまっては、いくら風音であっても頷く他道は残されていなかった。

「はい。鬼舞辻無惨と戦う時に役立たずにならないよう、それまではどうにか自分の中で調整することにします。あ……あと五分で無一郎君が鬼と遭遇……すみません!後ほど必ずお会いしましょう!可能な限り先を送り続けるので、絶対死なないで!あと怪我の手当て、先にしてから向かって下さいね!実弥君、急ごう!」

皆より遥か先を見る風音は、一気に張り詰めた空気を醸し出した全員の返事を聞くことなく、実弥の手を引っ張って走り去っていく。

その背中を三人が見つめ、自分たちもと足を動かしかけた時、思わぬ人から置き土産だと言わんばかりの言葉が届いた。

「胡蝶、栗花落!お前らは腕と足の怪我手当てしてから向かえ!嘴平も腹怪我してんだから、大人しく胡蝶から手当て受けろよ!死ぬ気で戦って、死ぬ気で生き残れェ!」

どうやら全員の怪我をいつの間にやら把握していたらしい。
ほぼ怒声なのに労りに満ちた実弥の言葉に、しのぶは小さく笑って頷き返した。

「ご心配なく!不死川さんも風音ちゃんの腕の怪我、ちゃんと手当てするように言ってください!あと不死川さんの怪我もお忘れなく!」

もう随分と離れてしまったので返事は聞こえなかったが、片手を上げたのが見えたので、しのぶの声は届いたのだろう。

風音だけでなく、分かりにくいながらも人を想える実弥の優しさに張り詰めていた気を少し緩め、しのぶは二人の体を素早く且つ丁寧に観察して必要なものを頭の中で弾き出した。

「さて、手早く手当てを終わらせます。反論は許しません、早く動きたいのならば大人しく私の処置を受けましょうね」

今すぐにでも突っ走ってしまいそうな伊之助に釘を刺し、しのぶは次の戦いのための準備を行っていった。
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