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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


正直なところ、菩薩像の攻撃を避けて皆の行動を追い、僅かな隙間時間で粉微塵にする方法を考えるので精一杯だ。

そんな中で必死に平静を保っていても、長い月日を共にし任務や警備に幾度となく共に赴いた実弥の目は誤魔化せない。

「風音ー!一旦下がれェ!もうすぐ嘴平来んだろ!芥なんぞは俺や嘴平に任せろ!お前は先を送んのに集中しやがれ!」

実弥の指示は的確である。
そぞろな思考で戦い続ければ近いうちに限界を迎え、木偶の坊と成り果ててしまうからだ。

だが上弦の鬼に対して柱三人という……有利な状況とまではいかなくても、ギリギリ対等なこの状況を失いたくないとなれば、風音が後援も後援に回るなど選択肢から外れる。

「まだ戦える!ちょっと逆上せてるだけ……だから!役立たずになる前に……全力でいきます!夙の呼吸 漆ノ型 裂葉風・改……玖ノ型 星の入東風!」

風音の現状を知らない者が見れば、本当に何の問題もなく攻撃を放っているように見える。
苦痛など何も感じず、いつも通り技を放っているのだと。

送ってくれている先を見ても技は難無く菩薩像へと届き、的確に端から削っていっているので、いつも通りの風音にしか見えない。

一点を除いて。

「クソッ……言うこと聞きやしねェ!全然ちょっとじゃねェじゃねぇか!はァ……風の呼吸ーー」

通路に降り立った風音と、その風音に氷の息吹を吹きかけようとしている菩薩像の間に滑り込み、全ての息吹を押し戻した。

「逆上せてるなんて可愛いもんじゃねェだろうが!その鼻から出てるもんは何だァ?!脳に負担かかってんだろ!」

その鼻から出ているもの……生暖かい赤い液体は、風音の唇を通り顎へと流れ、ポタポタと通路へと滴り落ちていた。

もちろん風音自身も肌を液体が伝うような違和感があるので、鼻から血が流れ落ちていることは承知の事実である。
しかし風音の表情からは、諦めて後援に務めようとする色は全く感じ取れない。

「大丈夫!この芥は私が受け持つから、実弥君はあと少しで到着する伊之助さんと塵屑の相手して欲しい!……これだけ先を見てたら、私の血の毒の成分が濃くなってるはず。もう一回塵屑の頭から被せてやるから……お願い!」
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