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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


実弥より遥かに先を見ているであろう風音の体がふわりと浮き上がった。

日輪刀を振り上げた格好のまま。

「実弥君放して!私が……私が頸を」

「落ち着かねェか!捨て身なんざさせねぇに決まってんだろ!」

実弥の腕に抱きかかえられ、そこから飛び出そうともがく風音が先程までいた場所に、美しくも禍々しい氷の菩薩像が出現していた。

実弥が飛び退いていなければ、風音は氷の菩薩像に間違いなく痛手を負わされていた。

それが分かっていても挑みに行こうとしていた、いや、今も尚挑みに行こうとする風音に叱責が降り注ぐ。

「焦んなっていつも言ってんだろうが!ここで木偶の坊なるつもりかよ!」

第一戦目で木偶の坊になるためにここに来たのではない。

通路に着地した実弥の腕にそっと手を当て、首を左右に振った。

「ごめんなさい。もう……大丈夫。無茶しないし、木偶の坊になんて」

「蟲の呼吸ーー」

「花の呼吸ーー」

まるで風音の言葉を遮るように。
まるで風音の先程までの行動を咎めるように、背後から二つの影が勢いよく横切り、氷の菩薩像を僅かに退かせた。

「……胡蝶の説教は長ェぞ。覚悟しとくんだな」

ぶるりと身体を震わせた風音と日輪刀を構え直した実弥の前に姿を現したのは、蝶の髪飾りを着けた師弟。

そのうちの一人、蝶の羽を模した羽織を羽織っている柱の背中からは、激怒の雰囲気が存分に漏れ出している。

「風音ちゃん、後でゆっくり、しっかりお話ししましょうね。今はあの鬼を倒すことを優先しましょう。私とカナヲがあの鬼を、不死川さんと風音ちゃんは、あの像をどうにかしてください」

「あ……しのぶちゃん。ーー?!分かりました!実弥君、一時の方向に気を付けて!私が先に出ます!」

美しい羽織を羽織った柱、しのぶに意見しようとした風音に向けられたのは、可愛らしくも怒りがふんだんに盛り込まれた笑顔だった。

もうこれ以上怒らせてなるものか。
そう決意した風音は、既に戦闘態勢を万全に整えていた実弥より先に飛び出し、鬼が回復するまでの時間稼ぎとして出した菩薩像へと切りかかっていった。
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