第23章 閃光と氷

現在風音の瞳に映っているのは、送り込んだ先の通りに鬼へと攻撃をしかけてくれている実弥の姿。
そして頭の中に流れ込んで来ているのは、本来なら自分たちよりも早くここに到着する予定だった蟲柱であるしのぶと、その継子のカナヲ、そしてあと一人が近付いて来ている姿。

(柱三人と継子のカナヲさんと、少し遅れて杏寿郎さんの継子の伊之助さん。これだけ集まってくれれば……誰も犠牲にならず倒せるはず)

こんな能力を持っていようと、鬼殺隊全員は救えない。
必ず犠牲者が出るこの決戦で可能な限り救わなくては。

決意を新たに一度目を瞑り深呼吸を落として……実弥の背目掛けて声を張り上げ駆け出した。

「離れて！」

この声で実弥が飛び退くはずだった。
しかし実弥は飛び退くことはせず、鬼に厭な笑みを浮かべて、あるもの目掛け足を蹴りあげる。

それによって高く舞い上がったのは金色の扇子。

実弥は鬼の二対持っていた扇子の一つを蹴り飛ばしたのだ。

「何するのさ？！手荒いなぁ！僕は君とじゃなくって、風音ちゃんと触れ合いたいのに」

「テメェの口はつくづく胸糞悪ィ！だが……望み通り触れ合わせてやらァ、ありがたく受け取れェ！」

攻撃手段を持っていない方の腕を強く引き地面へ押し倒したと同時。

実弥が退かないことに驚き戸惑っていた風音が到着し、何も言葉を発することなく左腕を鬼の眼前へと翳した。

「うわぁ……風音ちゃんって意外と残酷……ゲホッ！」

そしてその左腕を滑ったのは若葉色の日輪刀。
滑ったそばから若葉色の刃には赤い液体が流れ出し、重力に逆らうことなくボタボタと鬼の顔に赤い液体……鬼にとって猛毒の血液が滴り落ちる。

それは鬼の頬だけでなく、目や口の中に容赦なく降り注いだ。

「もう実弥君に触れないで。あんたなんかに実弥君もしのぶちゃんも誰も殺させない。ここで頸落として」

「グッ……結晶ノ御……ギャッ」

厄介な血鬼術を放とうとした鬼の口が、実弥によって横に切り裂かれた。
忌々しげに睨み付けてくる鬼に、実弥も憎悪を込めた視線を返す。

「柱舐めんなァ！テメェの切り札出させるほど優しかねェぞ！……？！風音、来い！」