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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


「ねぇ、どうしてそんな意地悪なこと言うの?」

緩慢な動きで振り返った鬼から、永遠と不気味に張り付いていた笑顔がようやく消え去った。
明らかに不愉快だというような表情に風音の笑みは更に加速し、本人も知らぬ間に満面の笑みとなった。

「人だった時も笑顔を作ってただけなんじゃない?笑顔も泣き顔も全て偽物。それを周りに気付かれないように、その時々に合ったお面を付け替えてただけでしょ?……どうして生まれてきたの?」

「君は今まで出会った女の子の……誰よりも意地ーー」

「風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐」

憤りから風音に振り上げた腕は、ぐしゃりと音を立てて床へと墜落した。
果てしなく痛みを伴う風の呼吸によって。

「ーー……っ、血鬼術 寒烈の白姫」

再び二人に距離を詰められた鬼は美しい氷の女人を二対生み出し、辺りを凍てつかせる霧を発生させた。
しかしずっと先を見続けている風音と、今し方先の光景を再度頭に流し込まれた実弥は容易に飛び退いて避けてしまう。

怒りの表情でこちらを睨みつける鬼から目を逸らさないまま足を動かす風音へと、同じく鬼へと詰め寄るため足を動かしている実弥から怒号が浴びせられた。

「何考えてやがる!一人で勝てると思ってんのかよ!何であんなことしやがったァ?!」

「あんな奴に……人を小馬鹿にするような奴に伊之助さんのお母さんや……しのぶちゃんのお姉さんが殺されたんだよ?ニヤけた顔で私の大切な人の心を踏み躙ったんだよ!実弥君だって……傷付けられたでしょ。だから、せめてあのニヤけた顔を歪ませたかったの。止めて欲しくなかった」

感情的になってはいけない。
格上の上弦の鬼相手に感情的になってしまえば隙を作ってしまう。

そう分かっていても、開戦当時から浴びせられ続けた父親に関する話や、柱たちと先を見て知っていた目の前の鬼の情報が頭の中を憎悪で満たしていく。

仲間の大切な家族を、実弥が慕っていたと言っていたしのぶの実姉カナエを殺した張本人が笑い続けていることが、風音にとって何より不快だったのだ。

(あんな奴の前で……泣きたくない!でも胸が痛い。全身の血が沸騰したみたいに体が熱い。目の奥が……痛い)
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