第23章 閃光と氷
風音と実弥が会敵した頃、しのぶはカナヲと行動を共にしていた。
「全く……不死川さんと風音ちゃんは気が早いですね。本当なら私たちの方が早くあの鬼と遭遇するはずだったのに。カナヲ、貴女にも先の光景が見えていますか?」
どうやら土壇場で風音が幾つもある先の中から、しのぶの負担が軽減する未来を探し出し、実弥を誘導したようだ。
つまり実弥はそんな風音の選択に異を唱えることなく、甘んじて受け入れて、例の鬼に向かっていたこととなる。
相変わらず鬼殺に心血を注ぎ、似たような戦法を好む二人に呆れつつカナヲをチラと見遣ると、苦笑いしながら小さく頷いている姿が映った。
「はい。師範たちだけでなく、ここに落とされる寸前に風音ちゃんが姿を確認した人全員に、先を送ってくれているのだと思います」
風音の望んだ通り、柱だけでなく継子たちや玄弥にも先の光景は無事に届いているようだ。
だがカナヲは炭治郎たち杏寿郎の継子たちと違い、実践で先の光景を送り込まれるのが初めてなので、戸惑っているように見える。
「大丈夫、カナヲは覚えが早いですから、すぐ慣れますよ。それはそうとして、今、私たちに送られているのは不死川さん視点……心臓に悪いことこの上ないですね」
しのぶと少なからずカナヲが冷や冷やしている光景。
それは入れ代わり立ち代わり風音と実弥が鬼に対して攻撃をけしかけているもの。
しのぶもカナヲも風音と共闘したことがないので、実弥と同じような戦闘方法で突っ込んでいく風音の姿に驚きである。
「心臓に……そう言えば剣士たちの噂で聞いたことがあります。任務では真っ先に突っ込んで行き、何故か自分の血を鬼に被せてから頸を斬るって。確か風音ちゃんの血は鬼にとって……?!」
毒でしたよね
そんな一言は新たに流れてきた衝撃的な光景によって閉ざされた。
「……さっそく鬼に触れられたようですね。頸を!斬る!鬼の!先を見るだなんて。後でお説教です。戦いやすくはなりますが……自分の命を何だと思っているんでしょう?……急ぎますよ、カナヲ」
走る速度を上げたしのぶの額には怒りから血管が浮き上がっている。
しかしカナヲもしのぶの気持ちが分かるので、異を唱えることなく頷き、後に続いた。