第23章 閃光と氷
右前腕、右頬にそれぞれが痣を発現させ、余裕さえ感じさせる上弦の鬼へ。
二人は師弟時代から培われた連携で技を続けて放ち始めた。
「何でそんなに怒ってるのさ?苦しみから開放されるのが嫌なの?僕は風音ちゃんを救いたいなぁ。一つになろうよ!血鬼術 凍て曇」
鬼が扇子を振る素振りを見せた瞬間、間合いを詰めていた二人は背後へと跳躍して十分に距離を摂る。
「風音、目ェ瞑っとけよ。眼球凍らされたら先の戦いで木偶の坊になっちまう。瞑ったままでも警戒したまま、隙を見て適宜攻撃開始、出来るなァ?」
「目を瞑って戦うのは初めてだけど大丈夫と思う。他の方の先とこんがらがりそうだけど……やってみる」
話している間にも二人の周りには冷気の煙幕が広がり、容赦なく体温と視界を奪っていく。
視界に関しては脳内に流れてくる光景でどうにかなるが、体温はそうもいかない。
とりわけ華奢な風音の体温低下は著しく、止まったままでいればあっと言う間に体が強ばって動かなくなってしまう。
そうなれば足手まといになるだけでなく、喰われでもすれば鬼殺隊の存亡に関わってしまうので、放たれてくるであろう血鬼術をくらわないよう、蛇行しながら走り出した。
「私が動いて隙を作ります!実弥君の後援は得意なんで!」
風音が動き出したのを音で確認すると、実弥も先の光景を頼りに足を動かした。
「そうかィ!ヘマすんじゃねェぞ!」
実弥の言葉に心の中で返事をし、人の心を醜く踏みにじってくる鬼と距離を縮めていく。
だがいくら先が見えると言えど、簡単に距離を縮めさせてはもらえない。
「血鬼術 枯園垂り」
冷気が煙幕のように広がり、更には蛇行して移動しているにも関わらず、まるで風音がどこにいるのか正確に把握しているかのように氷柱が頭上に現れ、容赦なく振り落とされた。
そしてそれを避けるために着地したと同時に、金色の鋭い一閃が右の視界に走り、既のところで日輪刀で防ぐこととなる。
「残念、止められちゃったか」
金色の一閃は鬼の扇による物理攻撃で、踏ん張りきれなかった風音の体は吹き飛ばされ、部屋に満ちている水の中に叩き落とされた。
水は体が凍てつくほどに冷たく動きを止めそうになるが、金属がぶつかり合う音が耳に響き、寒さを無視して戦闘に再度身を投じた。