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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


「余所見してんなァ!時透なら大丈夫だ!今はテメェの心配してろ!」

「実弥君……はい!六秒後、回廊に飛び移ろう!上弦の鬼の頸取りに行く」

脚色無しの未来を柱と継子……そして少し遅れてやって来ていた玄弥に送った。
今から実弥と目的の場所に向かえば、無一郎たちが上弦の鬼と遭遇する前に合流出来るはず……

そう自分に言い聞かせて実弥に引かれる力に抗わず、はぐれないように身を寄せて狙いの回廊を見据える。

「あぁ、あそこだな!風の呼吸ーー」

「夙の呼吸ーー」

二人が日輪刀を横に薙いで風を発生させると、踏ん張りのきかない体はその風に煽られて回廊へと転がり込んだ。

「いきます!」

そして受け身をとって即座に体勢を整えると、間髪なく背後にある部屋の障子に向かって技を放つ。
すると激しい音を立てて障子が吹き飛び、まるでこの状況を待っていたのだと言わんばかりに大量の鬼が溢れだしてきた。

「気色悪ィなァ!塵屑の分際で群れてんじゃねェ!風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ」

「夙の呼吸 漆ノ型 裂葉風 改」

二人の放った技は溢れ出てきた大量の鬼に漏れなく届き、巻き込み斬り裂いて、そして跡形もなく全てをチリと化した。

「全部の部屋に鬼がいるわけではないみたいだね。実弥君、少し待って。腕の傷、今のうちに縫合しとくから」

大量の鬼との戦闘による興奮状態。
更には事も無げに言う風音に聞き流しそうになったが、実弥はハッと我に返って白く細い腕を掴んだ。

「塵屑野郎にやられたのかァ?!血は流し込まれてねェだろうなァ?!」

「うん。間一髪ってところだったけど。あと一秒切り離すのが遅かったら、たぶん私は鬼にされてたと思う。無一郎君に感謝しなきゃ」

鬼になる条件は鬼舞辻無惨の血を体内に流し込まれること。

それにもかかわらず風音は呑気に傷薬を塗り込み縫合し、包帯を巻き付けている。
だがよく見ると体が小刻みに震えているので、動揺しているのだと見て取れた。

動揺や恐怖によって、序盤も序盤で柱である風音の戦力は失えない。

抱き締め落ち着かせてやる時間は無いので、頬をそっと撫で手の温かさを風音に伝える。

「お前は鬼になってねぇ。目も爪も人間のモンだ。……立てるな?」
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