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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


実弥に確認されてくるりと体を見回すも、つい今しがた手当てをしたところ以外は、煤で汚れていたりするくらいで怪我らしい怪我は一つもない。

「いつでも大丈夫!傷薬も化膿止めも鎮痛剤も応急処置道具一式も、鞄に全部入ってるから準備万端!あと少しで皆さんも到着……されるので?」

顔については見えないので煤に関して何とも言えなかったが、そっと実弥が親指で拭ってくれたところを見ると、やはり顔も所々煤で汚れていたらしい。

「顔も綺麗なった。おし、風音!塵屑野郎ぶっ殺しに行くぞォ!俺から離れんな、遅れ取っても待ってやらねェぜ!」

優しい声音から力強く頼もしい声音へ。
まるで風音を鼓舞するような実弥の言葉に大きく頷き返し、門の中へと視線を動かした。

爆発により立ち上っていた煙は風に流され薄くなり、鬼舞辻無惨の焼け爛れ様々な場所が弾け飛んだ体が瞳に映る。
そしてあと一つ……華奢で美しい女性がそれに走りよっていく姿も視界の端に映った。

「遅れない!ではお館様、天元さん。行ってまいります!塵屑野郎を倒して必ず戻りますので、一晩お待ち下さい!」

実弥が一足先に駆け出した後を追うため、風音も日輪刀を抜き出し鬼舞辻無惨の頸を斬るべく走り出した。

「絶対戻ってこいよ!お館様と待ってっからな!……たく、嬢ちゃんも逞しくなったもんですね。あんなに細っこくて俺らのこと怖がってた女が、今じゃ鬼舞辻のことを塵屑野郎って呼んで刀片手に挑んでいっちまうんですから」

「あぁ、そうだね。本当に……逞しくなってくれた」

吐息を漏らすような返事に天元は小さく笑いを零して頷き、最後にと二人の背中を目に焼き付けて背を向ける。
そしてお館様を労わるように抱え直すと、音も立てずにその場から姿を消した。





(天元さん……お館様をどうかお願いします。私は……えっと、塵屑に斬り掛かる前に珠世さんを……いや、今じゃダメなんだ。あれ、どうしよう!頭の中ぐちゃぐちゃなって何をしたらいいか)

「風音ー!考え過ぎて立ち止まんじゃねェぞ!今は塵屑野郎に痛手を追わせることだけ考えろ!珠世って鬼は後で回収する!突っ込めーっ!」

風音の混乱をまるで悟ったかのように叫ばれた言葉に一瞬キョトンとなるも、すぐにその表情はスっと引き締まった。
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