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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


もしかすると本当に隊服や髪の毛先が焦げているかもしれない。
しかしそれを確認するよりもしなくてはいけないことが風音にはある。

どうにか抱え上げているお館様を無事に門の外まで待避させなくてはならない。
腕や足が悲鳴を上げていたとしても、外で待ってくれている人にお館様を送り届け、すぐに引き返して戦闘に参加しなくてはならないのだ。

「お館様、すぐそこで天元さんが待ってくれています。大声を出す無礼、お許し下さい!……ーー実弥君!予定通りお館様は無事です!どうか門を」

体調の芳しくないお館様の体に障るかもしれないと、不安になりつつもあげた声はしっかりと外まで聞こえていたようで、全て発するまでもなく門が勢いよく開いた。

それと同時に実弥が、続いて天元が門から飛び込んできて、風音の前まで走りよって来てくれる。

「風音、よくやった。お館様もご無事で何よりです」

「嬢ちゃん、お館様は俺に任せろ!何やったのかは、嬢ちゃんたちが無事に帰ってきた時に聞かせてくれよ!」

実弥に促され天元にお館様を預け、すぐさま鞄の中から傷薬を取り出した。

「実弥君が時間通りに来てくれたから、頃合を合わせやすかったの。天元さん。お館様をよろしくお願いします。私と実弥君は……塵屑野郎……鬼舞辻無惨を倒してきます。必ず戻るので、待っていて下さいね」

ニコリと二人に笑顔を向けながらも、屋敷を炎の海に包む要因となった爆風により、飛んできた瓦礫で傷付いた足や顔に傷薬を塗り込みながら包帯を巻く。

どの傷もあの爆風や熱風にさらされたとは思えないほどの軽い傷で、精神的にも身体的にも、これからの戦闘において影響が及ばないと分かったため笑顔が零れたらしい。

笑顔のまま手を動かし続ける風音に二人は安堵したものの……実弥は冷や汗をかいて、天元は呆れた表情で実弥を見遣った。

「不死川ぁ……お前が鬼舞辻のこと塵屑野郎って呼んでっから、嬢ちゃんまで真似しちまってんじゃねぇか」

「……別に構わねェだろ。塵屑野郎には違ェねぇんだから。おい、風音!傷は問題ねェんだろうなァ?!問題ねェならそろそろ行くぞ!」
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