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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


辛く映るお館様の背中を支えて布団の上に起き上がるのを手伝い、庭へと繋がっている開かれた障子の先を見据えた。

二人の和んでいた雰囲気は霧散していき、穏やかだった目元も緊張感によりスっと細められる。

「お館様、あと十秒です。私の方で細かな調整を致しますので、私のことはお気になさらず」

早口で言い終えた風音にお館様が頷くと、図らずも二人は同時に深呼吸をして気持ちを落ち着けた。

そしてその僅か数秒後、二人の予知通りに鬼舞辻無惨が姿を現した。





その頃、実弥は他の柱たちより一足先に本部へと足を向けていた。
もちろん傍らには爽籟が寄り添っており、疾走する実弥に遅れまいと懸命に羽を羽ばたかせている。

「そろそろ塵屑野郎が出てくる時間だな。ここからだとあと五分ちょっとかァ?……爽籟、もう少し速度上げるが、辛ェなら無理せず後から合流しろ」

「辛クナイ!ダガ足手マトイニナリタクナイカラ、俺ノコトハ気ニセズ走ッテクレ。後ロヲ振リ向ク必要ハナイ!」

実弥から見ても爽籟にはまだ多少の余裕があるように感じる。
例え自分が速度を上げたとしても、僅かな誤差で本部に辿り着けるだろうと見立て、遠慮なく速度を上げた。

そしてやはりその速度に必死に食らいついてきているであろう羽音に笑みを零し、今まで言えなかったと言葉を紡ぐ。

「爽籟、お前が俺の鎹鴉で良かったって思ってる。塵屑野郎の根城でも期待してんぞ!」

柱の鎹鴉として何より嬉しい実弥の言葉に涙が滲みそうになったが、それをどうにか堪えた。

「俺モ実弥ノ鎹鴉デヨカッタ。実弥、行ッテクレ!実弥ナラモット速ク走レルダロ!」

「そうかィ。じゃあ先に行かせてもらう。待ってんぞ!」

そう言って更に速度を上げて離れて行く実弥の背中を見送っていると、予想外の声が背後から聞こえてきた。

「爽籟サン!楓デス!柱ノ方々ニ塵屑野……鬼舞辻無惨ノ襲来ヲ伝エテ来マシタ!私モ共ニ向カワセテ下サイ!」

バサバサと真横に来た羽音に恐る恐る視線を動かすと、本人の紹介通り……楓が懸命に羽を動かしている姿が瞳に映し出された。

「楓?!柱ニ伝エタ……?ソレハ本部ノ鎹鴉ノ役目ダッタハズジャナカッタカ?!ドウシテ楓ガ……」

どうやら事前の打ち合わせでは、鬼舞辻無惨の襲来を伝える役割は本部の鎹鴉が行う手筈だったようだ。
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