第23章 閃光と氷
そんな二人見守っているのは、鬼殺隊に入隊した時からずっと共に側にいた二羽の鎹鴉。
楓と爽籟もしばしの別れを惜しむかのように身を寄せ合い、風音と実弥の準備が整うことを待っていた。
「はァ……そろそろ行くか。本部に行くまでも油断すんなよ、鬼が出りゃあ、すぐに楓飛ばして知らせろ。……気ィ付けて行ってこい」
心配性な実弥の言葉に小さく笑い、風音は胸元から顔をひょこっと覗かせ笑顔を向ける。
「心配してくれてありがとう!行ってきます!実弥君もどうかお気を付けて、行ってらっしゃい」
風音の言葉を合図に二人は互いから離れて頷き合い、風音に至ってはお供に選んだ沢山のものが入っている鞄を撫でて身を翻した。
そして互いが互いの相棒の名前を呼んでそれぞれの向かうべき場所へと走り出した。
しばらく走り続けていると、辺りが薄暗くなってきた。
すぐ側を飛んでくれている、空の色に混じってしまいそうな楓を腕を広げて呼ぶと、難色を示すことなくふわりと舞い降りてくる。
「楓ちゃん、暗くなってしばらくすると塵屑野……鬼舞辻無惨がお館様の前に現れるから、詳細を知ってる爽籟君を除く柱の方々の鎹鴉に知らせてもらっていい?昨日の会議で杏寿郎さんのお屋敷に、無一郎君とか密璃ちゃんたちが泊まるってお話ししてたから、要君がいいかも。お願い出来る?」
「塵屑……カシコマリマシタ。デモ……本部マデゴ一緒シナクテ大丈夫デスカ?鬼ハ出マセンカ?」
実弥には道中で鬼が出ればすぐに知らせろと言われている。
しかしそれは十二鬼月、それも風音一人では勝ち目のない上弦の鬼や鬼舞辻無惨を示しているはず。
雑魚鬼や何故か総力戦で姿を見なかった下弦の鬼は含まれていない。
それくらいの強さの鬼ならば風音一人で十分対処できるからである。
そして楓を通して見た未来では上弦の鬼や鬼舞辻無惨はおろか、雑魚鬼さえ姿を現す気配がない。
つまり楓を遣いに出しても問題ないということだ。
一つ懸念があるとすれば……
「大丈夫だよ。鬼は出ないから。でも……楓ちゃんが側に居なくなるのは心細い。ごめんね、柱なのに情けないこと言って……寂しくて心細いけど、やるべきことをしなくちゃ!楓ちゃん、お願い」