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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


しかしながら器用に紙に描かれていく絵は、どう頑張って見ても人の原型をとどめていない。
頭と……辛うじて手足であろうものが描かれているので、本人は間違いなく人に着物なり洋服なりを着せている絵を描いているつもりなのだろう。

だが実弥の目には未知の生物が未知の何かしらを纏っているようにしか見えない……残念ながら。

「え?こっちの背が高い方が実弥君で、少し小さいのが私だよ?実弥君が紋付羽織袴で、私が白無垢に綿帽子被った絵なんだけど……実弥君と私とでは見え方が違うのかな?」

そう言われ差し出された紙をもう一度よく確認してみるも、未知の生物に違いない。
関節があらぬ方向に曲がっているので、現在の状況故に不吉なものに映ってしまう……

音楽の才や頭の良さに恵まれた少女は、絵が壊滅的に苦手なのだと自覚のない少女だった。

「……なるほどなァ。そう言われっと俺らに見えなくもない……かァ?何にせよ着たいもんは伝わったから、祝言楽しみにしとけ。ちなみにこの絵は居間に飾っててやるよ」

だが風音が実弥に自分の想いを伝えようと必死に描いたものを笑うことなど出来るわけもなく……なんなら見ようによっては愛着の湧く絵に笑顔が零れ、ふわりと艶やかな髪を撫でた。

「飾るの?!確かに私的にも懇親の一枚に仕上がったなぁ、とは思っていたんだけど……でも伝わってよかった!フフッ、今から楽しみだな。明日、死にものぐるいで頑張らなきゃね!鋼鐵塚さんに新しい日輪刀も届けてもらったし!皆さんの想いを胸に、願いを現実にしようね」

頭に与えられる心地よい暖かさと感覚に更に表情を綻ばせた風音の脳裏に浮かんだのは、本日の会議で賜った新しい日輪刀。

刃には柱のみが刻印を許された

『悪鬼滅殺』

と刻まれた、柱となり初めて賜った風音の日輪刀だ。
柱もそれぞれの担当刀鍛冶から最終調整の施された日輪刀が届けられ、どれも刃こぼれ一つない決戦のために想いを込められたものである。

「ハハッ、懇親の一枚に違ェねェ。この懇親の一枚の絵に負けねェくらい懇親の力で、塵屑共を根絶やしにしてやらァ。分かってると思うが、お前は俺の側から離れんなよ。万が一離れちまったら、他の柱の誰でも構わねぇから、合流することを優先しろ」
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