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涼風の残響【鬼滅の刃】

第23章 閃光と氷


張り詰めた静かな場から一変、蜂の巣をつついたような騒がしさが生じた柱合会議。

実弥によって図らずしももたらされた騒がしさをどうにか切り抜け、サチたちが待つ二人の屋敷へと帰還した。

「はァア……とんだ会議になっちまったァ。てかそんな驚くことかよ。だが悪ィな、風音。戦前日に疲れさせちまって」

「お疲れ様でした。私は全然大丈夫だよ!決戦前夜に言ったら怒られるかもしれないけど、実弥君が改めて言ってくれたの嬉しかった。あぁ、私を家族にしたいって思ってくれる人がいるんだ。その人が私の誰よりも愛しい人だなんて、幸せ以外の言葉が思い浮かばないなって」

決戦を翌日に控えた夜とは思えないほど、穏やかな表情で実弥の真ん前に座り白いフワフワを撫でる風音がいつも通り過ぎて、戦など起こらないのではないかと錯覚しそうになってしまう。

しかし風音だけでなくお館様までもが、明日の夜に鬼舞辻無惨が奇襲をしてくる先を見ている。
それもお館様の屋敷で、お館様の息の根を止めるために。

先を見る力を持つ二人が見た未来はまだ覆っていない。
つまり明日必ず鬼舞辻無惨がお館様を皮切りに、鬼殺隊全隊士を殲滅に乗り出すのだ。

「そうか。お前がそう言ってくれるなら何よりだ。……祝言の時は好きな衣装着せてやるから、どんなの着てぇか考えとけ。俺は風音が気に入るなら何でも構わねェ」

互いが互いの存亡を掛けた決戦で、風音たちを含む死亡する可能性のある剣士たちが一人でも多く無事に帰還出来るよう、会議で幾つか策を講じた。

その中の一つは

柱であっても十二鬼月と一人で会敵しないこと

特に風音の能力は双方に多大な影響を与えるものなので、最低でも柱一人と共に行動することが義務付けられている。
それも風音を生き残らせる大きな策ではあるが、実弥の言葉により更に強固なものとなる。

「本当に?!えっと……あ!紙に描くからちょっと待ってね!」

近くに置かれていたいつも通りパンパンに膨れた鞄から取り出されたのは、真っ白な紙と両親から贈られた筆入れ。
そこから更に筆と墨が取り出され、白いフワフワな毛に墨が落ちないよう器用にサラサラと筆が動いていく。

「着たいのあったのかよ。……未知の生物」
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