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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


「あぁ……どう考えても布団で寝た方がいいだろうに。抱えあげようとすりゃあ、がっちり浴衣掴んできやがる。起きてんじゃねぇだろうなァ?」

見る分には緩々に全身の力を抜いて寝ているのに、いざ抱えあげようとヒョイと持ち上げると、その瞬間に風音の手に力が入り実弥の浴衣をしっかり掴んでくる。

今も試してみるがやはり結果は同じ。
実弥の浴衣を、まるで離れてなるものかと言わんばかりの力で掴んで離さない……
しかしその表情は穏やかそのものなので実弥の頭が混乱する。

「ほら、赤子って指近付けると反射的に掴んでくるだろ?そんな感じじゃね?どれどれ、兄ちゃんが布団に運んで……うわっ、両手で断固拒否!」

「お前なァ……コイツで遊んでんじゃねェよ。あ"、ほら起きちまった」

天元に抱え上げられそうになった風音は、実弥の浴衣を両手でしっかり掴んで離れることを断固拒否。
それでも下ろしてもらえなかったので、暖かさが離れ続けたことにより覚醒してしまった。

「ん……実弥君。警備……行くの?待って……私も」

冷や汗を流しながら抱え上げた風音の体をそっと元に戻す天元に溜め息を零し、柔らかな頬をフニフニと摘む。

「今日はもう警備行っただろ。風音を放って黙って行かねェから心配すんな。眠いなら寝とけ」

「そっか……そうだった。……実弥君、少しお酒の匂い……でもやっぱりいい匂い」

スンスンと実弥の浴衣に顔を擦り寄せたかと思えば、モゾモゾと動き出し、胡座をかいている足の上にスポンとおさまり……再度夢の世界へと旅立ってしまった。

「……不死川、お前……よく耐えてんなぁ。俺なら絶対無理!こんなんされたら襲っちまうだろ?!」

「あ"ぁ"?耐えるも何も、こんだけ無警戒な女に手ェ出そうにも出せねェだろ。いいんだよ、俺の感情なんざどうとでもなる。こんな時期だからこそ、せめて今だけは望むまま好きに穏やかに過ごさせてやりてェ」

もう決戦は数日後。
その前日には柱合会議が控えており、実弥はもちろんだが、風音が穏やかに過ごせる日は数えるほどしかない。

今までの会議で様々な対策を練っているといえど、完璧なんてものは存在せず、誰が命を落としても可笑しくない激戦が待ち受けているのだ。
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