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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


そんな心身共に激痛を伴うであろう決戦前。
今の風音を見ているだけでは想像すら出来ないが、決戦は確実に迫っており、風音の胸中も穏やかではないはずだ。

それでも今だけはと穏やかに眠る風音の頭を撫で、猪口に入った酒を一気にあおった。

「まぁ……そうなるか。俺はさ、もう鬼殺隊じゃねぇから戦の渦中には行けねぇんだ。守ってやりたくても守ってやれねぇ。……頼むから死んでくれんなよ。お前らの死に顔なんざ、嬢ちゃんに見せてもらったモンだけで十分だ」

そして天元も猪口の中の酒を一気にあおり、徳利を片手に持って実弥と自身のものに新たに注ぎ入れた。

ユラユラ取ら揺らめく酒にはそれぞれの顔が映り込み、揺らめきからか少し頼りなく映ってしまっている。

それをかき消すように再度二人は一気にあおり、笑顔を向け合った。

「死なねェよ!確かに宇髄はいねぇけど、本来ならいなかった煉獄もいるんだぞ?柱九人、誰も欠けることなく揃ってんだ。信じて待っとけよ」

「だな!まぁ、一つ心配あるとすりゃあ嬢ちゃんが跳ねっ返りな行動取らねぇかだが、不死川がいれば大丈夫だろ!えーっと、サチにヒイにラギだっけか?決戦の日にあの人に預かってもらう手筈になったみてぇだし、お前ら何の心配もなく暴れられるな!」

二人が心配に思っていたことは、決戦の日にサチやヒイやラギをどうしてやるかだった。
生きて帰るつもりと言えど、何が起こるか分からず、生きて帰ったとしても怪我は免れない。
そうなると同居している家族たちが置き去りになってしまう。

それをポロリと食事の席で零すと、それならば自分が預かると男性が名乗りを上げてくれたのだ。
始めは死地に赴く風音たちを引き留めようとしていたが、決戦に勝つことにより鬼に苦しめられる人がいなくなるのだと説明すると、胸の痛みを堪えるような表情ながらも、背中を押してくれた。

そしてその代わりと言っては可笑しいかもしれないが……と約束を交わすこととなる。

『生きて戻り、幸せな二人の姿を見せてくれ』

その言葉を頭に巡らせながら、実弥は天元に頷き返した。
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