第22章 想いと約束
実弥でさえ風音の祖父母の話を聞いたことがなかった。
聞いたことがあるといえば、予知の力は母方の祖母か祖父から受け継がれたというものだけ。
風音の父親である功介に祖父母の話や鬼殺隊へ入隊した理由を聞こうにも、今は皆が知っての通り鬼にされたが故に人生の幕を下ろしたので、真相はきっと分からないまま。
風音が知っているならば話は別だが……
「そう……だったんですね。私の両親のみならず、お父さん側の祖父母も鬼に……実弥君と出会って育ててもらって鬼殺隊に入ってから、なんとなくそうかもしれないって思ってましたが。真相は分からないですけど、お父さんのことが知れてよかった。ありがとうございます」
やはり風音も知らなかった。
そもそも風音がそれを知っていれば、いの一番に実弥に話していたに違いないので、風音が知らなかったことは実弥の想定の範囲内である。
それよりも鬼によって多くの親族を奪われてしまった風音の今の心境が気がかりで、実弥は天元の嫁たちに囲まれている風音を引っ張り寄せ、足の間に座らせてやった。
「大丈夫かァ?辛けりゃ泣いて構わねぇぞ」
相変わらず優しい声音は風音の心の中を暖め、笑顔が翳ることはなく、その表情のままくるりと実弥と向き合った。
「大丈夫だよ!一人ぼっちだったら泣いてたかもしれないけど、今の私には実弥君がいてくれるし、実弥君が繋いでくれた縁で、大切で大好きな人たちがたくさんいてくれるもの!いつもありがとう、実弥君。大好きです」
久方ぶりのところ構わずの愛情表現。
いつもなら頬を掴むなり口を塞ぐなりしていたが、決戦も近くなった今日に限っては望むままにしてやることにした。
「そうかィ。お前が笑ってられんならそれでいい。好きに好きなだけ言っとけ」
叱られず、更には好きに言ってもいいと許可をもらった風音は嬉しそうにキラキラと瞳を輝かせ、実弥によってくるりと体の位置を戻されたことを皮切りに、男性へと話し出した。