第22章 想いと約束
「それにしても風音ちゃんの薬は凄いね。痛みがすぐに和らいだよ!確か君のお母さんは薬師だったっけ?功介が自慢げに何度も話してくれたよ。美人な奥さんは薬も作れる!娘はお転婆だけど可愛くて、俺の後をずっとついてくるんだって言ってたなぁ」
「嬢ちゃんは昔っから跳ねっ返り……もといお転婆だったのか!しかもちっちゃい頃から変わってねぇのな!不死川に保護された当初、ずっと不死川の後追いかけてたし」
「あ"ぁ"……そう言えばそうだっけかァ?まぁ、ついて回ってくんの雛鳥みてェで面白かったがな」
「……雛鳥……お転婆」
「可愛いから何でも許せちゃう!金の髪もヒヨコちゃんみたいで素敵!」
罪の証だという傷の手当てが終わり、現在は居間にて全員で食事を共にしている。
傷の手当てをしている間に天元の嫁たちも無事に到着し、風音は嫁たちに周りを固められ愛でられながら、男三人の遣り取りを複雑な気分で眺めていた。
そんな中で天元の嫁たちは肯定的な言葉のみを向けてくれるものだから、複雑な気持ちながらも笑顔は途絶えていない。
その笑顔を見た男性が頬を緩め、懐かしそうに目を柔らかく細めたので風音が首を傾げると、殊更優しい声音で言葉を紡いだ。
「風音ちゃんは本当に功介の笑った顔にそっくりだ。こっちまで笑顔になるような、ふわっとした笑い方。優しい奴だっただろ?学生時代は人気者で……」
しかし柔らかな表情は徐々にかげり、視線を自身の手元へ移動してしまった。
「あの……どうされましたか?お父さん、学校で何か問題でも起こしていましたか?!私、優しいお父さんしか記憶にないのですけれど、ご迷惑をかけていたのならば、娘の私が」
謝罪します
と言いかけたが、それは男性が首を左右に振ることによって止められた。
何が男性をそうたらしめたのか全員が沈黙し注目すると、今度は悲しげな表情で皆の疑問を晴らす。
「功介に迷惑なんてかけられたことはないんだ。そうじゃなくて、功介は在学中に両親を亡くした。強盗に酷くやられたんだって聞いてたんだけど……鬼殺隊に入ってたってことは、鬼に両親を奪われたのかもしれない」