第22章 想いと約束
「俺は死なねェし、コイツも死なねェよ。宇髄、協力してくれたってェのに詳しく話せなくてすまねぇな」
「謝んなよ。嬢ちゃんが先を見ちまった時の取り乱し方見りゃあ、軽々しく言えるもんじゃねぇんだろうなって分かってたからな。兄ちゃんはお前ら全員が戻ってきてくれれば何も文句言わねぇよ」
天元はそう言うと風音の手を離し、今度は二人の頭をポンポンと撫でる。
その様は言葉にも発していた通り、兄が下の兄妹に接する時のようなもので、兄妹のいない風音にとってはこそばゆいながらも嬉しいらしく、ふにゃりと表情を綻ばせた。
そして実弥にとっては……下に兄妹はいたものの、兄という存在がいなかったので、慣れず妙な恥ずかしさを覚えたようで、顔を真っ赤に染めて天元の手を叩き落とした。
「ちょいちょい出てくる兄貴ヅラ何だよ?!俺はテメェの弟じゃねェ!クソ、ガキ扱いしやがって……もう帰れェ!」
血管を浮き上がらせて実弥が全力で怒り、追い出すように天元の体をグイグイ押しているのに、押されている当の本人である天元は可笑しそうに笑っている。
しかし風音は天元と共に実弥の反応を楽しむことなどできる訳もなく、また実弥と共に天元に怒ることも出来ない。
となると、することは一つである。
天元を押し出そうとしていることにより少し離れた実弥に歩み寄り、力んで血管が浮き上がっている腕に手を添えた。
「皆でご飯一緒に食べよう?天元さんへの感謝の気持ちを込めたご飯、天元さんにぜひ食べてもらいたいな。ね?皆で食べたら美味しいし楽しいよ」
いつも通り、実弥がいきり立っている時ほど風音は声を荒らげない。
そもそも風音が実弥に対して声を荒らげたのは、開戦時の光景を見て混乱し戸惑っていたあの時だけなのだが……
「あ!やっぱこの料理俺のために作ってくれたモンだったか!そりゃいい!ほれ、不死川、嬢ちゃん!座れ座れ!俺の嫁たちももうすぐここに到着するんだ、皆で楽しく飯食おうぜ!」
……実弥のみならず風音の動きが止まった。
そんな二人を気にもとめず、天元は押し出そうとしていた実弥の手から逃れ、ドカッと料理の前に腰を下ろす。
ちなみに二人は天元の嫁たちが来るなど聞いていなかったので固まってしまったのだが、次第に風音の表情は嬉しそうに紅潮していった。