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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


それがたまに顔に出てくるので、その度に実弥がさりげなく肩を抱き寄せ落ち着かせてやっているのだ。

言葉を何も発さず、ただただ風音の心の安寧を願い、ふわりと抱き寄せると、強ばっていた表情や体が解れホッと息をつく。
今も心地良さそうに実弥の胸元に体を預け、次第に顔が笑みで満たされていった。

(相変わらず分かりやすいヤツ。顔ふにゃふにゃになってやがる。だが……)

「風音のこんな顔、知ってんの俺だけだって思うと悪かねェな」

低く心地よく響く実弥の声に反応した風音が、ふにゃふにゃになった顔を胸元から覗かせた。

「私ね、実弥君の腕の中がどこよりも一番大好き。ぽかぽかと優しい気持ちになれるもん。実弥君にこうしてギュッてしてもらったら、皆が優しい気持ちになれるんじゃないかなって思えるくらい……すごく心地良いです」

「お前がそう思ってくれんなら何よりだが……大抵のヤツは俺に拘束されっと、全力で怯えるに違いねェよ。それをまァ……よくここまでふにゃふにゃになれるもんだ」

体温を上げ頬を赤らめる風音から色香を感じる。

普段色香とは程遠い風音の色香を引き出すことに成功した実弥は口付けを……と考えるが、ある生き物の鳴き声が鼓膜を震わせたので、やむを得ず中断。

「ムキ」

「っざけんなよ、宇髄ィ。やっぱ俺らに忍鼠張らせてんじゃねェだろうなァ?……なァ、風音。見えなきゃ問題ねェだろ?」

「え?ちょっと待って、あの筋肉モリモリのネズミちゃんって、天元さんのーーっ?!んっ……」

「いやぁ、昼間っから見せ付けてくれんじゃねぇか!実弥ちゃんっていつからそんな独占欲強くなって、いつから恥ずかしがり屋じゃなくなったの?……おい!いつまでやってんだ!」

天元はいつもいきなり居間へと続く縁側から姿を現す。
それを見越した実弥は風音の姿が見えないよう、縁側に背を向け、更に華奢な体を自身の体でしっかり覆い隠して口付けを強行。

もちろん風音は恥ずかしさから体をふらふら揺らせているが、しっかり抱き寄せてやっているので倒れることはない。

天元は現在、協力を快諾したにも関わらず正に蚊帳の外に追い出されている状態だ。
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