第22章 想いと約束
『不死川さん、俺の屋敷の……しかも一応外の庭で何してるの?』
帰ってくるなり無一郎が見たものは、尻もちを着きながら風音を胸の中にしっかりと抱きかかえた実弥の姿。
実弥を拒むことを知らない風音はもちろん、抵抗することなく大人しく抱っこされたままの、所謂二人が密着した姿だった。
(何で俺だけ怒られた?女が転がりそうなったら誰でも助けるだろ?!……腑に落ちねェ)
時透邸を出発してから暫く走り、今はあと少しで不死川邸まで辿り着くところまで来ている。
その間、ずっと実弥の頭の中をグルグル回っているのは、帰宅した無一郎に何故か実弥だけが注意されたという衝撃的な事実だった。
注意されたと言っても軽い苦言であったが、それでも風音に向けて一切苦言を呈することがなかったので、実弥の中でうまく消化できず残っている状態である。
首を傾げながら走っている実弥の姿を横目で確認している風音は風音で、別れ際に言われた無一郎の言葉を頭の中に巡らせていた。
『死なないでね。俺、風音ちゃんのことも好きだから死んで欲しくない。不死川さんが万が一間に合わない距離にいたら、絶対に俺が守るから。あと、不死川さんみたいに名前で呼んで話しかけてよ。俺の方が年下なんだし』
前半は真剣な表情で風音にだけ聞こえる声で、後半の名前や話し方に関しては実弥にも聞こえるような普通の声量で。
その時、実弥の表情がほんの少しピクリと反応したように見えたが、特に何も言われなかったので快く受け入れた。
(私も無一郎君のこと大切だから守りたいけど……小さな声で言うくらいだし、実弥君に言わない方がいいのかな?)
「分かんねェ……」
「分からない……」
それぞれが違うことで呟いた言葉は偶然にも一致した。
「分からないって何がだよ?そう言えば時透と別れ際に話してたろ?何かあったかァ?」
「う、ううん。えっと……実弥君が守りたいって思う人はどんな人かなぁって。人によって色々だと思うから、ちょっと気になったの」
全力で走りながら何を考えているんだと言おうとして、実弥はその言葉を飲み込んだ。
話の流れからすると、無一郎と風音が別れ際に話していた内容に関連すると分かってしまったからである。