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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


無一郎が複雑な気持ちを振り払い自邸へと足を動かし始めた頃、実弥は呆れながら門の前で佇んでいた。

「風音ちゃんよォ……俺ん家に来てすぐくらいの時、まさかそうやって門の前で待ってたのかァ?」

「ん?うん。あの時は鬼殺隊とか柱とか、あんまりよく理解出来てなかったから。実弥君が強いってことだけは分かってたんだけど、鬼と戦う実弥君のことがどうしても心配で。こうして門の前に座って耳を……でも!たまにだよ?!ちゃんと藤の花の香りを体に着けてたからね!」

真剣な表情をしながら門にピタリと耳をくっ付けていたかと思うと、何やら実弥との約束を思い出したようで、冷や汗を流しながら懸命に弁明しだした。

鬼が出るかもしれないから、邸内の庭と言えど夜中に外にあまり出ないように。

と保護されて間もない頃に風音が実弥に言われたことだ。

まさか実弥も幾度かこうして待たれていたなど思ってもいなかったので衝撃的な事実であったが、自分なりに危険を遠ざけるための対処を施していたようであるし、何よりあの頃の風音は一人ぼっちになることを何より恐れていたので仕方がないと思えた。

それにもう随分と前のことなので、目の前で冷や汗を流し自分から視線を逸らしていようと、そもそも叱り付けるつもりはない。

何より今この現場には実弥と風音しかいないとはいえ、道場内では剣士たちが体を休めている。

怯えるように視線をそらす少女の前に仁王立ちで立ち塞がっている自分の姿を剣士たちに目撃された際、勘違いされても癪なので、風音の隣りに腰をストンと落とした。

「ったく、怒りゃしねェよ。ほら、ちゃんと耳くっつけとかねェと時透の足音聞き逃しちまうぞ。帰るまでここで待ちてェんだろ?」

頭を撫でながらそっと門に誘導してやると、逸らされていた瞳がしっかりと実弥を捕え、ふわりと柔らかく弧を描いた。

「うん!少しでも早く帰りを知りたい……あっ!実弥君、時透さんが帰って……」

「危ねぇ!」

言葉を言い終わる前に風音の体がクラリと傾き、実弥は咄嗟に腕を掴んで胸元に引き寄せる。
……言うまでもない。

無一郎が無事に帰還し、自邸の門を開いたことによって風音の体が門の外へと転がり出てしまうとこだったのだ。
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