第22章 想いと約束
風音が改めて説明するまでもないほどに理解してくれた。
さすがだと心の中で感嘆しながら二人の手を離し、ようやく見知らぬ誰かの先を見ることをやめる。
「うん。少し気が緩んだ時に、知らない人の先が流れ込んできたの。すぐに見るのやめようと思ったんだけど、あの目玉が見えたから……つい」
褒められた行為ではないと風音自身が理解しているからこそだろうが、先を見る時の瞳の不思議な色がおさまったかと思うと、悲しげに揺らせて視線を畳へと移動させた。
「興味本位で見てたわけじゃねェだろ。心ん中で謝っとけ。とりあえず……時透、俺らがここにいると迷惑かけちまうかもしれねえェ。あと少し邪魔して帰るつもりだったが、もう帰らせてもらう。今からなら夕暮れまでに家に到着するだろうしなァ」
寂しそうにブランと垂れていた風音の手を握ってやり、無一郎を見てから空を見上げる。
まだ空には太陽が高く昇っているので、今から時透邸を出たとしても夕日に変わるまでには不死川邸へと辿り着くはずだ。
それを実弥のみならず風音も確認すると、実弥の手を握り締めたまま、先ほど座っていた場所へと移動する。
そして腕に抱え込んだのは運んでおいた二振りの日輪刀。
まだ見知らぬ人への罪悪感は完全に消えていないようで、いつも通りの元気な笑顔は覗かせていないが、実弥の手の暖かさに癒されているらしく、僅かであっても顔には笑みが浮かんでいる。
「すぐにお暇出来るように準備してたよ。時透さん、バタバタと慌ただしくてごめんなさい。時透さんや剣士の皆さんにご迷惑をかけないよう、実弥君と一緒に帰ります。その……目玉は私が帰りに日に炙って倒すので、少しの間このお家から出ないで……」
「ちょっと待ってて!不死川さん、風音ちゃんが着いてこないように捕まえてて下さい!えーっと、十分……いや、五分で戻るから!頼みましたよ!」
「あ?!おい、時透!」
キョトンする風音と、無一郎の手を握ろうとした実弥の呼び掛けに笑顔を向け、無一郎は瞬く間に居間から走り去って姿を消す。
そして数秒後、廊下を走る姿を確認した……日輪刀を携えた姿であったが。