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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


「開戦前ノ大切ナ時期デス。危険ヲ可能ナ限り遠ザケツツ、焦ラズ不死川様ト時透様ヲ待チマショウ」

鬼の分身である目玉を日の元へ引き摺り出すのが正解なのか、それともこのまま二人の帰りを待つことが正解なのか。
風音にも判断出来ないが、自分が飛び出すことにより二人に捜索という手間を掛けさせることだけは理解出来る。

それにこうして側で寄り添い、不安や葛藤を癒そうとしてくれている楓がいる。
無闇矢鱈と屋敷を出て、優しい言葉を掛けてくれた楓を困らせることは出来ないと、風音はいつでも実弥と共に帰れるように準備を進めることにした。

「うん。楓ちゃん、ありがとう。時透さんにご迷惑掛けるかもしれないから、いつでも帰れる準備をしておかなきゃ。準備と言っても、お部屋に置いたままの日輪刀取りに行くくらいだけど……実弥君のも準備しなくっちゃ」

焦り慌てる様子のない風音に楓は安堵し、目的の部屋へと足を動かす風音のお供することを、暖かな腕の中で決意した。



「風音、何が……先見てんのか?目の色、先見る時のんになってんぞ。誰の何が見えた?」

楓に見守られながら二本の日輪刀を居間に移動させて数秒後、実弥が無一郎と共に部屋の中へと入ってきた。
少し汗が滲み、いつもより顔が上気している様子から、二人は爽籟からの突然の帰還要請に急いで帰ってきてくれたようだ。

そんな実弥と無一郎に風音は立ち上がって歩み寄り、二人の手を柔い力でそっと握り締める。

「数分前からずっと見てるよ。詳しくは後で説明するので、先にこれを見てください」

そして先ほどから流れ続けている光景を二人に見せる。
何の変哲もない街中をゆっくり歩いている光景に二人は首を傾げたが、こんな何でもない光景を見せるためだけに、風音はわざわざ力を使わないし、ましてや数分間も見続けることはしない。

何があるのかと注意深く見知らぬ誰かの見ている光景を暫く観察し、ほぼ同時に実弥と無一郎が驚き目を見開いた。

「これ、不死川さんが初めに見つけたっていう鬼の目じゃない?ここって……俺の住んでる街だ」

「あぁ。やっぱまだウロウロしてやがったのか……この街ってことは、この光景見てんのは俺らの知らねェ人で、この近くを偶然通りがかっただけの人で間違いねェな?」
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