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涼風の残響【鬼滅の刃】

第22章 想いと約束


「目玉……そこかしこにいるみたい。どうしよ、お家の中にはまだ居ないみたいだけど。皆さんにご迷惑かけない間に出て……行ったら実弥君や時透さんに心配かけるし叱られる」

誰の先の光景が頭の中に流れ込んできているのかは分からない。
剣士たちは時透邸の道場内から出ずに休んでいるので、偶然屋敷の前を通りがかった人の光景だろう。

剣士たちに手拭いを配り水を配り、まだ体力の余っている風音が気を緩めて、縁側で基礎鍛錬でもしようかと考えた矢先、頭の中に光景が流れ込んで来たのだ。

知らない人の先を勝手に見るのは気が引けたので直ぐに切ろうとしたのだが、その人の視界の端に件の目玉が映り、失礼だと理解しつつも繋げたままにして今に至る。

「生垣の陰、横路地に塵屑の隙間……実弥君風に言うと、塵屑の芥が塵屑の陰にコソコソ隠れやがって、似合いの場所に違いねェが。……楓ちゃん、近くにいるかな?」

言い慣れない言葉を呟きながら、今は側にいない楓を探すために庭をぐるりと探索してみると、まるで探していることを察知したかのように、空からふわりと舞い降りてきてくれた。

「ドウサレマシタカ?」

「楓ちゃん!ちょうど楓ちゃんを探してたの!でも、爽籟君と予定あったんじゃない?私のところに来てもらって大丈夫?」

風音の腕の中にすっぽりおさまった楓は首を左右にふり、自分が今までいた場所に視線を向ける。

「イエ、爽籟サントオ約束ハアリマセン。ソコノ木ノ枝デ一緒ニイタノデスケド、不安ゲナ風音サンガ目ニ入リマシテ。爽籟サンハ不死川様ト時透様ヲ呼ビニ行ッテクレマシタ」

なんと優しい鎹鴉たちは風音の様子を伺ってくれていたらしい。
しかも不安そうな風音を一人きりにするのではなく、何かを察知した二羽が立派に健気に役割分担までしてくれる徹底ぶりだ。

「ありがとう、楓ちゃん。ここら一帯にあの目玉が結構いるみたいで……私が一人で対処出来ればよかったんだけど」

念の為とはいえ、風音が一人で外出することは制限されている。
それを理解している楓は、不安を拭いとるように風音の腕に頭を擦り寄せた。
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